翌日、ハッピーと共にギルドへ着くと、仕事に出ている仲間達が多いのか静かであった。
周りを見渡すと、中心のテーブルに突っ伏しているナツの姿が目に入る。
ルーシィの腕の中で眠っていたハッピーが目を覚ますと、

「ルーシィ、オイラちょっと行って来る!」
「…うん」

相棒のところへ行くのだろうと見届けていたが、リクエストボードの前に居た少女と白い猫の方へ飛んでいくのが見えて、クスリと笑った。

――あたしも話しかけなきゃ。


「ルーシィ!」

一歩、足を踏み出したところで、名を呼ばれる。振り向くとミラジェーンが手招きしていた。

「ナツに頼みたい事があるの。私のところへ来るように伝えてくれるかしら?」
「はい、わかりました」
「お願いね!」

微笑む彼女は忙しそうにカウンターの奥へ入っていく。
ルーシィは深呼吸をしてからナツの居るテーブルに足を向けた。

「おはよう、ナツ。ミラさんが呼んでるわよ!頼みたい事があるんですって」

もそりと顔を上げた彼は、目を逸らして――

「…信じねえ」
「……」

ルーシィは返って来た言葉に耳を疑った。自分の聞き間違いではないかともう一度聞いてみる。

「今、何て言ったの?」
「どうせウソだろ?…ルーシィが言うことは信じねえ」
「なっ、ウソじゃないわよ!!」

プイっと顔を背ける彼に対して頬を膨らませた彼女は、これ以上そばに居られないと思ったのか、その場から離れた。
歩を進めた足を止めて、振り返る。

「…ナツ、ちゃんとミラさんのところ行ってね」
「……」

――返事もしない、何考えてるのよアイツ。「信じない」って本気で言ってるのかしら。

ルーシィの視線を感じているはずだが、ナツは彼女の方に振り向きもせず空になったジョッキを持ち、カウンター席へ歩いて行った。




☆☆★☆☆

日が沈んだ頃、そろそろ帰ろうとしたルーシィは、帰る前に一言声を掛けようとして桜髪の彼を探した。
単純だからもう機嫌が直っているかもしれないし、と前向きに考えて――
すると、ちょうど目の前から歩いてくるナツに歩み寄った。

「ナツ、…あの」
「……」

――目も合わせてくれない。

ナツは気づいてませんと言っているかのように、ルーシィの横を素通りする。


『…信じねえ』


「今までどんなにひどい喧嘩をしても、こんなこと無かったのに…」


『何でルーシィの言葉を疑うんだよ』

未来の自分に言ってくれたナツの言葉――それをふと思い出して、涙が零れた。




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