ギルドの掃除を頼まれたルーシィは階段を掃いていた。時計を見てから、俯く。

――ナツ、来てくれるかな。

不安な気持ちを抱えたまま階段を降りようとして、うっかり足を踏み外してしまった。

「きゃっ!」

転がり落ちて頭を打った彼女は、そのまま意識を失った。





☆☆★☆☆


「…んっ、あれ?あたし――」
「目が覚めた?よく眠ってたわよ」

医務室のベッドから起き上がり、いつの間にか手当てを受けていた両手足が目に入る。
頬にも傷が付いてしまった様で、痛々しい姿を鏡に映して溜め息を吐いた。
ベッドの側で椅子に座っていたミラジェーンが席を立つ。

「何か飲み物持ってくるわね?」

頷いたルーシィは、ふと時計を見ると――

「ミラさん!すみません、あたし帰らないと…」

扉の横に置いてあった鞄を手に取り、お辞儀をして急いで駆け出した。
痛みが残る身体であったが、夢中で足を動かした。もう辺りは真っ暗、外灯が点く時間である。

ルーシィは息を切らしながらも階段を登った。そして、扉を開く。

「ナツ!」

窓は開いた様子がないが、『おかえり!』と言ってくれる彼がソファに座っているように感じて、目を擦る。
けれど、ソファもベッドも綺麗なままで人の気配は感じられず、いつも居るアイツの居場所――そこにナツの姿はなかった。

「…あたし、またウソつきになっちゃった」

――最後のチャンスだったのに。

「・・・う、」

頬に流れてくる涙を拭うが、止まらない。足に力が入らずその場で泣き崩れた。






カタリと物音が響き、ビクッと肩を揺らす。俯いていたルーシィはそこに目を向けると――彼女の両目が大きく開く。
風呂場から顔を出して笑顔を向けてくるナツが、目の前に現れた。

「ルーシィはウソつきじゃねーだろ?…それに星霊魔導士じゃねえか!約束破らねえもんな!」

ゆっくりと近付いてきたその人はルーシィの隣に座り込んだ。彼女は驚きのあまり、目を疑う眼差しで彼を見つめている。
ナツがルーシィの頬と手足を一通り見て、

「おまえ、キズだらけじゃねえか?」
「あ、うん。掃除してたら階段から落ちちゃって…。もしかしたらナツ来てくれないかもってボーっとしちゃって」
「いつもは帰れってゆーのに、来いなんて言われたんだぞ!絶対ぇ行くだろ!」
「でも、ナツ…あたしのこと信じないって言ってたじゃない」

涙はいつの間にか止まっていたが、両目を赤くしている。
ナツはルーシィを見つめて、包帯の隙間から覗くギルドマークに目を移し、その手を握った。

「あー…いあ、あれウソだ!」
「……え、ウソっ!?」
「一生に一回、大ウソついてみたかったんだよなー」
「……」

笑いながら平然として答えるナツに、ルーシィは唖然。
しかし、笑い声が耳に届くとそれが段々と怒りに変わってきた。

「結局、あたしがだまされたってこと!?何よそれー!」
「でけえ声出すと頭に響くぞ!」
「アンタのせいでしょーが!」
「オレかよ!?おまえがドジなんだろ?」

握られていた手を振り解こうとして思い切り振ったが、ナツは握る手に力をこめてルーシィを引き寄せた。

「そーいや、忘れてたけど大事な話ってなんだ?」
「…あ、」

ルーシィの頬が赤く染まる。ナツの目を見ていられず俯いた。

「ルーシィ?」
「あのね、」
「おう!」
「あ、あたしね、……ナツが、好き」
「……」
「ナツ?」

恐る恐る顔を上げると、

「おまえ、今度はウソじゃねえだろうな!」
「本当よ!」

頭から湯気が出そうなくらいに真っ赤な顔をする彼女を見て、満足げな表情を見せるナツ。

「あーもう!何よこれ、罰ゲームみたいじゃないのよー!恥ずかしいー!!」
「オレをだました罰だろ?」

恥ずかしさのあまり自分の事で精一杯なルーシィは、「好きだ」と言われたことで満面の笑顔を見せるナツに気づいていなかった。


『アイツの困った顔を見るのが怖いのよ』
『…ナツ困ってたかな。嬉しそうな顔してたように見えたよ、オイラ!』


「やっぱりナツ、嬉しそう。…良かったね、ルーシィ」

窓の外からハッピーがお土産を持って覗き見ていたが、それに気付いていない様子の二人。
やっと仲直りができたんだとホッとしたのか、ハッピーは邪魔をしないようにギルドの方角へ飛んで行った。


(終)

☆☆★☆☆
練習とはいえ何が書きたかったのかよくわからない文章でしたね…。
「でぇきてぇるぅ〜」って言うハッピーも可愛いですが…私はナツとルーシィが仲良くしているのが嬉しいハッピーって流れが好きです!
多分、ハッピーを自分の目線で置き換えてしまうのかもしれません(*^_^*)

ここまで目を通してくださった方へ『ありがとうございました!』



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