オルトレマーレの星ひとつ
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「獄寺、昴!何してんだこんなところで!!」
「獄寺さん!探してたんですよ!…と、そちらの方は?」
目の前で姿が変わった山本クンと、10年前の姿を見たことはないが状況的に隣のポニーテールの子はハルちゃんで間違いないだろう。そしてその周りには同じく小さくなったランボとイーピン。
(…まさかこのタイミングで10年前の姿になるとは……)
姿が変わっても変わらなくても、言い方は悪いが戦力外には変わらないハルちゃんとは違い、ランボ、イーピン、山本クンの力は10年前と後では大違いだ。
特に山本クンは、この世界の戦い方を熟知していた。この世界のことを何も知らない私たちが、今あの敵を相手に出来ることは…
「とりあえず逃げるよ。山本クンがいなかったら、何も出来ない!」
「…癪だが仕方ねぇ!おい!お前らとにかく逃げるんだ!!」
ぽかん、とする10年前のハルちゃんたちに獄寺クンは叫ぶが、皆が状況を理解するよりも早く、長髪の方の敵が動く。
「逃がさないね!」
掛け声とともに鎌から放たれた炎の攻撃。まずい、ととっさに近くにいたハルちゃんを引き寄せた。
あたりに響く地鳴りの音と、立ち込める土埃。
げほ、と咳を一つして体を起こせば、身体中に痛みが走ったがまだ動けそうだ。
庇ったハルちゃんも、気絶こそしてるものの怪我はなさそうでほっと安堵の息をつく。
「辻井!」
名前を呼ばれた方を向けば、獄寺クンがイーピンを抱えてこちらの方へと来ていた。
「山本クンとランボは?!」
「向こうにいる!どっちも気を失ってるけどな!」
そう言う獄寺クンの腕の中にいるイーピンも気を失っていて、ぐったりとした顔をしていた。
「やりぃ!刀のやつもぶっ倒したぜ!」
空中で叫ぶ長髪に、獄寺クンはギリ、と歯を噛み締めて。
「お前は山本たちのそばにいろ。俺はあいつを倒してくる。」
手渡されたイーピンを受け取るが、獄寺クンもやはり先ほどの攻撃からイーピンを庇ったせいかボロボロだ。
立ち向かおうとした獄寺クンの手首を、思わず掴み止める。
「その怪我で満足に戦えると思ってんの?!私も加勢する!」
「馬鹿野郎!リングも持ってねぇのにこの時代で戦えると思ってんのか!」
「っ…!」
そうだ、私はリングを持っていない。10年前の世界ではリングがなくても通用する実力だったかもしれないが、この世界ではそれは大きな欠点だった。
「…覚悟を炎に変えるイメージ、だよ。」
掴んでいた腕を離し、小さく呟く。それを聞いた獄寺クンは少し目を見開いた後、口角を上げて長髪へと向かった。
山本クンたちをいつでも守れるようにと鎖鎌を抜いたその時だ。
「俺はいつだって覚悟はギンギンに出来てんだよ!」
獄寺クンのリングから、大きな赤い炎が上がったのは