オルトレマーレの星ひとつ
▼59
やっといなくなったと安堵したのもつかの間、今度は首が締まる感覚。
獄寺クンが私の襟元を掴んでいた。
「辻井!てめぇどういうことだ!ミルフィオーレに手貸してやがったのか!」
「は…?
骸くんを裏切るくらいなら死んだ方がマシだ!」
言われた言葉の意味を理解したと同時に頭に血が上り、獄寺クンの服を掴む。ボンゴレを裏切るということは、その守護者である骸くんを裏切るということだ。私はそんなことは何に誓ってもしない。
「じゃあなんであいつがお前のこと知ってんだ!」
「私に聞かないでくれない?!」
「お前ら落ち着け!そんなことしてる場合じゃないだろ!」
山本クンの一喝に、閉まっていた襟元が緩む。
「獄寺、お前まだ匣は開かないんだろう?」
「さっきからやってるけど開かねえんだよ!壊れてるんじゃねーのか?」
「炎をイメージしろ、獄寺。覚悟を炎に変えるイメージだ。」
「覚悟を炎にだ?」
「お前なら出来るさ。
いや、できてたんだぜ!それに昴、お前にもな。
ま…でも今回は俺に任せておけ。ツナも心配だしな…
下がってろ」
「!
てめ!」
山本クンに何かを言おうとした獄寺クンを、後ろからフードを引っ張って止める。
「何しやがんだ!」
「今の私たちが行っても戦力外!状況判断しろ!」
その言葉で獄寺クンの足が止まる。
「へっ、今回だけはてめーにくれてやる。とりあえず見せてみろ。」
「おー。
こいつで決めるぜ。」
そう言って跳ね上げた二つの匣。
しかし、それを開く前に、山本クンを煙が包んだ。
「まさか…!」
煙が晴れた後にはそのまさか。10年前の山本クンがバットを構えた体勢のまま立っている。
その次の瞬間後ろでも煙が上がり、やはり10年前の姿になったランボたちが。
まずい。かなりまずい。