オルトレマーレの星ひとつ
▼53
昴side
ゲホゲホと咳き込みながら周りの煙を払う。やっとピンク色の煙が薄れ始め、私の目に飛び込んできたのは
「辻井さん!」
驚いたような顔でこちらを見る、十代目クンと獄寺クン、それと女の人を抱える…
「…山本クン?」
記憶にある姿よりいささか成長した山本クンがいた。
「…辻井……か?」
目を見開く山本クンと目線がかち合う。
なんだっていうんだ、こっちの方がいろいろ聞きたいってのに。
「そうだけど…ここって10年後じゃないの?にしては十代目クンも獄寺クンも成長してないけど。」
「あ、あの、それは…」
拙い十代目クンの説明で理解したのは、ここが未来であっていること、十代目クンと獄寺クンは10年バズーカに当たってもうとっくに5分が経っているが戻れないこと、そして、先ほどまで未来の私がここにいたことだった。
「これ、未来の辻井さんが渡してくれって」
そう言って手渡された鎖鎌は、今私が持っているものとほとんど変わらなかったが、手持ちの部分に何やら穴が空いていた。
「なに、これ」
「俺に聞かれても…」
それじゃあと獄寺クンの方に目線を向ければ、知るかというように顔を背けられた。
「ま、とりあえず中に入ってから考えよーぜ。もうすぐそこだからな。」
山本クンの目線の先にある扉。とりあえず一番近い私が開け、山本クンを先頭にして中に入る。私はしんがりだ。
広い部屋の真ん中にはソファーが置いてあり、そこには先ほどまで探していた赤ん坊の姿があった。
「おせーぞ」