オルトレマーレの星ひとつ
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広い地下駐車場のような場所。その向こうには通路がある。あそこから入るのだろうか
「す、すげー!!ボンゴレってこんなの作れちゃうの?!」
驚きで目を見張れば、山本と辻井さんが笑った。首をかしげる俺と獄寺くんを見て、ケラケラと笑う辻井さんは山本に「説明してあげなよ」と。
「いいこと教えてやろーか?
お前が作らせたんだぜ、ツナ」
え…
「お、俺が?!」
ボンゴレ十代目になった俺が作ったというこの施設。嬉しいような、悲しいような…
ジャンニーニが作ったらしい、通路につけられたバリアを通る。最後にラル・ミルチが通ろうとした時、辻井さんが慌てた。
「あ!ちょっ!ストップ!」
「…?」
止めたかったみたいだが、ラル・ミルチはバリアを通った後。
次の瞬間
どさっ
そんな音がしてラル・ミルチが倒れた。
声をかけるが反応がない。
「あちゃー…」
「お前もだったのか…!」
額に手を当てる辻井さんと、理由がわかったらしい山本。知っていたのか?と山本が辻井さんに聞いたが、辻井さんは笑ってごまかしただけだった。
「ど、どーなってんの?!」
「心配ない。環境の急激な変化に体がショックを起こしただけだ。
ここは彼女たちにとって外界とは違う作りになってるからな」
「か、彼女たち…?」
「少しすりゃ目を覚ます」
頭がこんがらがる。ラル・ミルチが倒れた理由も、辻井さんがそれを事前に知っていたのも、何もかもが理解できない。
「…あ、そろそろかな」
通路を歩いていて、あとドアまで3メートルあたりと言うところで辻井さんが止まった。
先を歩く山本に待ったをかけ、隣にいた俺に鎖鎌を渡してくる。
「綱吉くん、これ、お願い」
「えっ?」
「『私』に渡しておいて」
言葉の意味がわからなかった。首をかしげる俺の頭をポンポンと叩いて、獄寺くんと山本と俺をぐるっと見る。
泣きそうで、それでも笑っている目。
「じゃあね、隼人くん、武くん、綱吉くん」
「過去の私に、よろしく」
そう言った瞬間に辻井さんの体がピンクの煙に包まれる。それが10年バズーカによるものだと理解するのに、そう時間はかからなかった