オルトレマーレの星ひとつ | ナノ
オルトレマーレの星ひとつ
▼52

広い地下駐車場のような場所。その向こうには通路がある。あそこから入るのだろうか

「す、すげー!!ボンゴレってこんなの作れちゃうの?!」

驚きで目を見張れば、山本と辻井さんが笑った。首をかしげる俺と獄寺くんを見て、ケラケラと笑う辻井さんは山本に「説明してあげなよ」と。

「いいこと教えてやろーか?

お前が作らせたんだぜ、ツナ」

え…

「お、俺が?!」

ボンゴレ十代目になった俺が作ったというこの施設。嬉しいような、悲しいような…

ジャンニーニが作ったらしい、通路につけられたバリアを通る。最後にラル・ミルチが通ろうとした時、辻井さんが慌てた。

「あ!ちょっ!ストップ!」

「…?」

止めたかったみたいだが、ラル・ミルチはバリアを通った後。
次の瞬間

どさっ

そんな音がしてラル・ミルチが倒れた。
声をかけるが反応がない。

「あちゃー…」

「お前もだったのか…!」

額に手を当てる辻井さんと、理由がわかったらしい山本。知っていたのか?と山本が辻井さんに聞いたが、辻井さんは笑ってごまかしただけだった。

「ど、どーなってんの?!」

「心配ない。環境の急激な変化に体がショックを起こしただけだ。
ここは彼女たちにとって外界とは違う作りになってるからな」

「か、彼女たち…?」

「少しすりゃ目を覚ます」

頭がこんがらがる。ラル・ミルチが倒れた理由も、辻井さんがそれを事前に知っていたのも、何もかもが理解できない。

「…あ、そろそろかな」

通路を歩いていて、あとドアまで3メートルあたりと言うところで辻井さんが止まった。
先を歩く山本に待ったをかけ、隣にいた俺に鎖鎌を渡してくる。

「綱吉くん、これ、お願い」

「えっ?」


「『私』に渡しておいて」

言葉の意味がわからなかった。首をかしげる俺の頭をポンポンと叩いて、獄寺くんと山本と俺をぐるっと見る。
泣きそうで、それでも笑っている目。

「じゃあね、隼人くん、武くん、綱吉くん」

「過去の私に、よろしく」

そう言った瞬間に辻井さんの体がピンクの煙に包まれる。それが10年バズーカによるものだと理解するのに、そう時間はかからなかった
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