オルトレマーレの星ひとつ | ナノ
オルトレマーレの星ひとつ
▼51

「昴って…え?!辻井さん?!」

「そーだよ。…10年前とそんなに変わってる?」

「見た目っていうか…」

そこまで行って俺は口ごもる。どちらかといえば変わっているのは見た目より雰囲気の方だ。
10年前の辻井さんは、俺から見たら犬や千種みたいに骸一筋で、柔らかい物腰で話してても俺たちに毒を吐いてる感じだった。

でも、今はまるで別人のように俺たちに向ける笑顔も口調も優しい。

「雰囲気が別人なんだよ。
…てか、お前がなんで山本と一緒に居やがる。
山本はラル・ミルチを迎えに来たんだろ。骸と一緒にいるお前がボンゴレと行動する理由があるのか?」


獄寺くんは、頭が良くて聡い。俺でもなんで、くらいしか思わなかったのに。

「…その話は着いてからね、隼人くん。
さ、行こうか。時間がない」


へらり、とかわすように笑みを浮かべて辻井さんはラル・ミルチに手を差し伸べる。

「辛そうならエスコートしようか?」

「…遠慮しておく」

ぱしっ、とラル・ミルチはその手を跳ね除けたが、辻井さんは気にした様子もなくそっか、とだけいって手を引っ込めた。
……リング編の時も思ったけど、辻井さんってタラシ…?


「どーしたのー、綱吉くん」


立ち止まって考え込んでいた俺を辻井さんが呼んだ。
駆け足でみんなに追いつき、山本の隣を歩く辻井さんの背中をふと見る。
身長は10年前より少し伸びてるはずなのに、なぜか俺の知ってる辻井さんよりも少し小さく見えた。





「俺を見失わないように付いてきてくれ」

ラル・ミルチが山本に走らないのか、と聞いたら、山本はそう言って小さな箱__匣だろうか_____を取り出して、マモンチェーンをリングから外した。


「手伝おうか?」

「いや、このくらいなら大丈夫だ」

「そ。」


「…あの、辻井さん、これ……」

「まあ見てなって。」


山本が匣の穴にリングをはめ込む。匣の中から飛び出したのは、…燕?



「なんだ?!」

「防犯対策用のカモフラだ。」

「…よそ見はしないでね」

辻井さんの言葉を皮切りにして、いきなり強い雨が降ってきた。
体に打ち付けるように降る雨は、まるでジャングルの豪雨みたいで痛い。


こっちだ、と山本のその言葉に導かれ、地下にいつの間にか空いた穴から伸びる階段を下りていく。下へと向かうエレベーターに乗ったとき

「ここはボンゴレの重要基地として、急ピッチで建造中だったんだ」

そう山本が入った隣で、辻井さんがエレベーターのパネルに手を置いた。


B5でエレベーターが止まり、ドアが開く。


「いまのとこ、6割方くらいできてるかな」
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -