オルトレマーレの星ひとつ
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『家族の定義』というのは、人によって変わるものだ。
例えば両親のどちらとも血が繋がっているのに子供として認められない者もいるし
例えば片方とは血が繋がっていないのに本当の子供のように愛情を注がれる者もいる。
そして
「俺と老いぼれは、血なんて繋がっちゃいねぇ!!」
そう叫んだXANXUSと九代目のように、全く血が繋がっていない者たちも、人の捉え方次第では『家族』となるのである。
観客席にいるスクアーロが、XANXUSに語りかけるように喋り始めた。それを目にしたチェルベッロがスピーカーで全員に聞こえるように音を大きくする。
原因は、XANXUSが生まれつき宿していた憤怒の炎。
なんでもそれを見たXANXUSの母親が、彼を九代目と自分の子供だと錯覚したらしい。
事実でないそれを九代目が肯定したのは、XANXUSを見張るためなのだろうか。
真意は九代目にしかわからないが。
ともかく、『九代目の息子』として育てられたXANXUSはある日自分が実の息子でないことを知る。
そして起こったのが、のちに揺りかごと呼ばれたボンゴレ史上最悪のクーデターだ。
(…くっだらない)
たとえそれが、XANXUSを見張るためだったとしても、監視下に置くためだったとしても。
九代目が愛したのは、まごうことなき『XANXUS』という一人の人間なのである。
無償の愛、優しい手。
それを振り払った彼の心情は、きっと私には一生理解できない。
…私の場合、それらはすべてひっぺがされたものだ。暖かさも、家族も、何もかも。
欲しくても手に入れられなかったものを拒む彼が、ひどく妬ましく見えた。