オルトレマーレの星ひとつ | ナノ
オルトレマーレの星ひとつ
▼35

家に帰ればソファーで爆睡する犬の姿。それを蹴落として腰掛け、ふぅ、と息を吐いた。

「あー、なんか疲れた…」

「昴!人の安眠妨害するんじゃないぴょん!」

「犬、安眠妨害なんて言葉知ってたんだ」

「人のことバカにしすぎぴょん!」

「お前はバカだろ」

それに朝に私の安眠を妨害したのはお前だろ。続けようと思ったその言葉を机の上に乗っていた麦茶(多分犬の)を飲むことで呑み込む。
氷が溶けてグラスに水滴が付くそれは温く、飲むんじゃなかったと後悔した。

「そういえばクロームと千種は?」

「柿ピーは銭湯、クロームはしらね」

「うわ、朝っぱらから銭湯とかジジくさ…」

ふと、今日の雲戦、お前見に行く?と聞いたが、行くわけないぴょん。と返された。
だよねー。



「辻井昴」

「え」

深夜、千種から割引券をもらって銭湯に行き、コンビニに寄った帰りに後ろから声をかけられた。
もう11時だし、今私は中学の制服を着ているから警察の補導かと思ったが、名前を知っているのはおかしい。
念のために鎖鎌に手を触れながら振り向けば

「げ…、跳ね馬…」

「おいおい、げってのは失礼だろ?」

そう言って苦笑する跳ね馬ディーノがいた。後ろには部下だろうか、スーツを着たおじさん。

「…今、時間あるか?」

「帰って寝るという大事な用事を控えてる。」

「そうか、暇なんだな」

「いやだから話聞いて…」

ちょっと来い、と手招きされた。



少し歩いたところにあるベンチに腰掛け、跳ね馬が話すのを待つ。朝にもリボーンとこんなことあったな。なんて思いながら、コンビニの袋から肉まんを出して噛り付いた。

「そこの人と跳ね馬もどうぞ」

ぽいっ、千種と犬用に買った肉まんを2人に投げれば、2人とも驚いたような顔をしながらもしっかりとキャッチした。
どうせ帰る頃には冷めてるだろうし、1人じゃ3つも食べれないし。

「今日の雲戦のことなんだがな」

肉まんを食べながら、跳ね馬はぽつぽつと言葉を続ける。

勝者は雲雀恭弥だったこと

その雲雀恭弥がXANXUSに喧嘩を売ったこと

ゴーラモスカとかいう機械が暴走したこと

その動力源が、ボンゴレ九代目だったということ

どうやらまだ九代目は死んではいないらしいが、危篤状態らしい。

「ふーん…


…で、それを私に言ってどうするんだ」

「なに、クローム髑髏たちに伝えてもらおうと思ってな。

たまたま見かけたから声をかけただけだよ」

「…あっそ。

んじゃ、私帰るんで」

「ああ。肉まんありがとな。」

「嬢ちゃん、気をつけて帰れよ」


ひらり、手を振って角を曲がった。

…九代目の危篤状態の時にたまたま外を出歩いて、たまたま私と出会って、ねぇ?



「ボス、あの嬢ちゃん勘が鋭いな」

「ああ。偶然じゃないこと気付いてやがった。」

「にしても、あの子がリトゥニアファミリーの…」

「生き残り、ってか…」
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