オルトレマーレの星ひとつ
▼33
「…どーする?」
「とりあえず帰るぴょん。俺眠い」
「私も」
一つあくびをして黒曜ランドへと足を向ける。クロームはあのお人好しな十代目クンのファミリーがなんとかしてくれるだろう
…あ、そういえば今は骸くんも十代目クンのファミリーなんだっけ。
「なんかやだなぁ…」
ぼそりと小さくつぶやいたが、どうやら千種に聞こえていたようでなにがと聞かれた。
べつに、なんでもないよ
*
ベッドで安眠していたら、頭を思いっきり蹴られた。
「昴、起きるぴょん!」
「うるせぇアホ犬!人を蹴飛ばすな!」
心が広いと有名(になったことはない)な私でも、これにはさすがにイラっときた。
怒鳴りながらベッドから跳ね起きて犬に向かってドロップキック。
スプリングの補助もあって犬の鳩尾にクリーンヒットした。どや。
「…昴……おまえに…客だぴょん…」
床で悶える犬が、息も絶え絶えにそう言った。
「客?」
自分で言うのもなんだが、私は友達が少ない。というかほぼいない。骸くんは友達というよりは主人とかそんな感じの方が近い気がするし、犬や千種、クロームとは共に住んでるのだ。
わざわざ私を訪ねてくる奴なんて…
「ちゃおっす、随分バイオレンスな目覚め方だな、昴」
「っ!アルコバレーノ!」
完全に気配を消して背後に立っていたのは、ボンゴレの家庭教師であるアルコバレーノ
不覚だが、全く気づかなかった。
「な、何しに来たのさ…」
「今日はお前に話があってな。俺についてこい」
「…ここじゃダメなの?」
「ダメだ。外で待ってるからな。着替えて出てこい。」
言いたいことだけ言ってひょいと窓から飛び降りたアルコバレーノ。
「仕方ないなー…
ほら、犬さっさと出てよ。」
犬を部屋から蹴り飛ばし、着替える。めんどくさいし制服でいいか。
*
「おまたせ、アルコバレーノ」
「あぁ、早かったな」
「まさかそんなこと言われるなんて思わなかったよ。」
いつも支度が遅いと犬や千種に文句を言われるもんだから、早かったななんて言われるのは新鮮だ。
M.Mちゃんに比べれば私はまだ早い方だと思う。女の身だしなみには時間がかかるのだ。(とM.Mちゃんが言っていた)
「女の支度を待つのは当然だぞ。マフィアは女に優しいんだ」
「ふーん、犬も見習えばいいのに」
まあ毛嫌いしてるマフィアの習慣なんて、絶対真似しなさそうだけどね。そう付け足して歩き出した。
「人がいなきゃいいんでしょ?公園でいいよね」
近所に遊具がボロボロになってしまって人が寄り付かない公園がある。家なんかも周りにはないし、人に聞かれたくない話ならもってこいの場所だろう。
「くだらない話だったら蹴っ飛ばすからね」
「それはおまえの感じ方次第だな」
「うわぁ、うざ…」
めんどくさいなー、と心の中で愚痴りながら、公園へと足を運んだ。