オルトレマーレの星ひとつ
▼32
二つのハーフリングを手に取る骸くん。
骸くんの勝ちだ、と思ったがまだマーモンはしつこく抵抗を見せる。
「ご存知ですよね?
幻術を幻術で返されたということは、知覚のコントロール権を完全に奪われたことを示している。」
そう言った瞬間にマーモンの首を締める巻ガエル__ファンタズマ。
地面が崩れ落ち、術士同士の戦いとも言えない骸くんの一方的な攻撃。
「君の敗因はただ一つ
僕が相手だったことです」
六の文字が刻まれた赤い目が光ったのと同時に、破裂したマーモン。
そして骸くんの手には
「これで…いいですか?」
一つに合わさった霧のボンゴレリングが。
よっしゃ、と手元でガッツポーズをしたが、十代目クンは何か不服なようで
「え、ちょ…!
そんな…そこまでしなくても…」
「…甘いね、あいかわず」
気持ち悪いくらいに。
べ、と気づかれないように舌を出した。
*
向こうの後継者であるXANXUSと何か話していたようだが、私には興味もないし知りたいとも思わないので気にせず千種と犬とともに骸くんの元へ。
「骸様!」
「すんげー!やっぱつえー!」
「相変わらずだねー、骸くんは!」
クフフフフ、と骸くんは笑う。きっと機嫌がいいんだろう。フの数多いし。
「てんめー、どの面下げてきやがった?」
「おい!獄寺!」
「人の感動の再会に首突っ込むなんて、精神どうかしてるよね」
「あぁ?!」
軽く煽ってやれば睨まれた。もう少し何か言ってやろうかと思ったが、骸くんにそれを阻まれる。
「やめなさい、昴。」
「ちぇっ」
骸くんが言うんならやめるけどね。
「それくらい警戒した方がいいでしょうねぇ。
僕もマフィアと馴れ合うつもりはない。
僕が霧の守護者になったのは、君の体を乗っ取るのに都合がいいからですよ、沢田綱吉」
嘘も方便。とはよく言ったもので、40パーセントほどの本音を混ぜながら嘘をつく骸くん。
キレそうになった獄寺クンを止め、十代目クンはお礼を言った。…この顔は、きっと嘘ばれてるな。
ふと、骸くんの目が閉じる。
「少々…疲れました……
この子を…」
骸くんが倒れる途中でクロームに変わり、地面に体を打ち付け…る前になんとかその間に自分の手を滑り込ませる
「セーフ…!」
女の子の体に痣はダメだ。絶対ダメだ。
地面に寝かせてやれば、スヤスヤという寝息が聞こえた。
どうやら骸くんの幻術もしっかりと機能してるようで、クロームの内臓も無事らしい。
「こいつすぐくたびれるぴょん。これだから人間は…」
ゲシッ、犬がクロームを蹴った。
「おまっ、女の子蹴るなって!アホ!」
てかお前も人間だろうが!
「…犬、昴、いこう」
「うい」
「はいよー。じゃあねー、クローム、みなさーん」
「この子放置ですか?!」
十代目クンの焦った声。ケラリと私は笑った。
「女の子は大事にするけどねー。やだよ、連れて帰って犬に怒られるのなんて」
「その女チヤホヤする気はねーし。
そいつは骸さんじゃないからな」
犬の言葉で十代目クンは察したらしい。じゃあね、ともう一度言い、体育館を出た。