オルトレマーレの星ひとつ
▼31
「む……さま…」
苦しみながら骸くんの名前を呼ぶクローム。
骸くん、はやく。
早くしないと、クロームが。
「骸…様……
力になりたかった…」
クロームがそう呟いたときに、ふと感じた懐かしい感覚。
霧がクロームを包むのを見て、安堵の息が漏れた。
「あいつがくる!!
六道骸が!
骸がくる!!」
沢田綱吉…十代目クンが叫ぶと同時に、倒れていた彼≠ェ目を開いた。
「クフフフフ
クフフ
クフフフ」
地面が盛り上がり、マーモンが吹き飛ばされる。
あいさつ、と言うのには、少し野蛮すぎる気がしたが。
「随分いきがってるじゃありませんか
マフィア風情が」
*
外野陣がガヤガヤとうるさい。
どうやら獄寺クンはまだ何か文句があるらしく
「しかし…さっきまでの女はどうなるんですか!」
あー、ほんっとうるさい。
「クロームと骸を分けて考えちゃダメだぞ
なあ、昴」
「…こっちに振る意味が全くわかんないんだけどね。
クロームがいるから骸くんは存在するし、骸くんがいるからクロームは生きてられる。
私が言えるのはこれだけだよ」
「…?!」
「い…意味わかんないよ…」
「だろうね、十代目クン頭弱そうだし」
「てめぇ十代目に向かってなんて失礼なことを!」
「昴!ボンゴレなんかと馴れ合ってないでこっちこいぴょん!」
獄寺クンの噛みつくような視線を感じながら犬たちの元へ戻れば、試合はとうとうラストスパートのようだった。
目の数字が『四』へと格闘能力を持つ修羅道に変わり、三叉槍を振れば幻術のマーモンが一瞬にして散る。あれってなんで元がトイレットペーパーなんだろう。
「ムムゥ!格闘のできる術士なんて邪道だぞ!
輪廻だって僕は認めるものか!
人間は何度も同じ人生を無限に繰り返すのさ
だから僕は集めるんだ!
金をね!!」
力を全開にしたマーモンの幻術で、床が歪み円状に変わる。そして
「クハハハ!強欲のアルコバレーノですか
面白い…だが
欲なら僕も負けません」
その床から出てくる火柱。
幻術に巻きつく睡蓮の花は、骸くんが好むそれだった。
「…おえ」
幻術への脳の処理が追いついていないんだろう。脳に直接作用する幻術に何度もかかったせいで、乗り物に酔ったような吐き気がする。
要はキャパオーバー、だろうか。
「死ね!」
マーモンのローブが広がり、骸くんが包み込まれた。
「骸さん!」
「…!」
「…生きてるよね」
ひやりと冷や汗が流れるが、直後に聞こえたマーモンのばかな!という声。
骸くんを覆うローブが飛び散り、代わりに見えたのは睡蓮に包まれる骸くん。
「堕ちろ
そして巡れ」