オルトレマーレの星ひとつ | ナノ
オルトレマーレの星ひとつ
▼31


「む……さま…」

苦しみながら骸くんの名前を呼ぶクローム。
骸くん、はやく。

早くしないと、クロームが。


「骸…様……

力になりたかった…」

クロームがそう呟いたときに、ふと感じた懐かしい感覚。
霧がクロームを包むのを見て、安堵の息が漏れた。

「あいつがくる!!

六道骸が!

骸がくる!!」

沢田綱吉…十代目クンが叫ぶと同時に、倒れていた彼≠ェ目を開いた。

「クフフフフ

クフフ

クフフフ」

地面が盛り上がり、マーモンが吹き飛ばされる。
あいさつ、と言うのには、少し野蛮すぎる気がしたが。

「随分いきがってるじゃありませんか

マフィア風情が」




外野陣がガヤガヤとうるさい。
どうやら獄寺クンはまだ何か文句があるらしく

「しかし…さっきまでの女はどうなるんですか!」

あー、ほんっとうるさい。

「クロームと骸を分けて考えちゃダメだぞ


なあ、昴」


「…こっちに振る意味が全くわかんないんだけどね。

クロームがいるから骸くんは存在するし、骸くんがいるからクロームは生きてられる。

私が言えるのはこれだけだよ」

「…?!」

「い…意味わかんないよ…」

「だろうね、十代目クン頭弱そうだし」

「てめぇ十代目に向かってなんて失礼なことを!」

「昴!ボンゴレなんかと馴れ合ってないでこっちこいぴょん!」

獄寺クンの噛みつくような視線を感じながら犬たちの元へ戻れば、試合はとうとうラストスパートのようだった。

目の数字が『四』へと格闘能力を持つ修羅道に変わり、三叉槍を振れば幻術のマーモンが一瞬にして散る。あれってなんで元がトイレットペーパーなんだろう。

「ムムゥ!格闘のできる術士なんて邪道だぞ!

輪廻だって僕は認めるものか!

人間は何度も同じ人生を無限に繰り返すのさ
だから僕は集めるんだ!

金をね!!」


力を全開にしたマーモンの幻術で、床が歪み円状に変わる。そして

「クハハハ!強欲のアルコバレーノですか

面白い…だが
欲なら僕も負けません」

その床から出てくる火柱。
幻術に巻きつく睡蓮の花は、骸くんが好むそれだった。

「…おえ」

幻術への脳の処理が追いついていないんだろう。脳に直接作用する幻術に何度もかかったせいで、乗り物に酔ったような吐き気がする。
要はキャパオーバー、だろうか。

「死ね!」

マーモンのローブが広がり、骸くんが包み込まれた。

「骸さん!」

「…!」

「…生きてるよね」

ひやりと冷や汗が流れるが、直後に聞こえたマーモンのばかな!という声。

骸くんを覆うローブが飛び散り、代わりに見えたのは睡蓮に包まれる骸くん。

「堕ちろ

そして巡れ」
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