オルトレマーレの星ひとつ
▼28
日が落ち夜が更け、とうとうクロームの出番がやってきた。
「骸様…」
クロームはぽつりとそう呟くと、槍をぐっと握った。
不安なんだろう。自分の実力、骸くんの代わりというプレッシャー、何より、ボンゴレ側が快く歓迎するはずない。
「大丈夫だよ、クローム」
私たちがいる。
そんな意味合いを込めて頭を撫でてやる。うん、と帰ってきた返事に笑みをもらしながら、私たちは並盛中の体育館へと向かった。
*
「こっちの霧の守護者のおでましだぞ」
アルコバレーノの声が聞こえるのと同時に、犬が体育館の扉を開けた。
クロームの前に立ち中に入ってきた私たちに、向こうは驚きの声を上げる。
「なぜこんな時に!」
爆弾を構える獄寺隼人。それを諌めたアルコバレーノは、ボンゴレに事情を説明しだした。そんな気はしてたが、まだ言ってなかったのか。
「う、嘘だ…
…霧の守護者って……ろ
六道骸!」
違うんだなぁ、それが。
クロームの歩き出す気配に、サッと退いてやった。
「クフフフフ、クフフフフフフ
Lo nego (否)
Il mio nome e' Chrome (我が名はクローム)
Chrome 髑髏」
あ、今のクローム最高にかわいいかもしれない。
*
まあ当然というかなんというか、クロームを警戒する彼ら。特に獄寺隼人は武器や眼帯を指差し、骸くんの憑依だと声を張った。
「人を指差しちゃダメだって教わらなかったのか?」
「あ゛ぁ?!」
睨み合う私と獄寺隼人を気にせず、沢田綱吉は口を開いた。
「六道骸じゃ…ないよ……」
さすがはボンゴレ十代目、というところだろうか。それを彼に告げるのは超直感か、それとも…
獄寺隼人に詰め寄られ慌てる沢田綱吉に、クロームは
「かばってくれるんだ。
ありがと、ボス」
「ク、クローム?!」
チュッ、と頬にキスをした。
慌ててひっぺがせば単なる挨拶だとかなんとか。
「え、ちょ、消毒!犬消毒出して!クロームの口消毒するから!」
「んなもん持ってないぴょん!」
「千種!」
「…ない」
「ええー…」
ハンカチなんぞ持ってないので、袖でゴシゴシとクロームの口を擦る。あんなのにキスしちゃダメでしょ!ばい菌入るよ!