オルトレマーレの星ひとつ
▼26
「昴…」
「ん?」
朝一番に部屋を訪ねてきた千種。部屋に入れようかと思ったが、どうやらすぐ終わる話のようで。
「昨日…どうして先に帰った?」
ああ、そのことか。
「…父さんがさぁ、剣士だったんだよ」
もう死んじゃったけど、と付け足せば、何かを察してくれたのか眼鏡を押し上げて何も言わずに去っていった。これだから、こいつらは一緒にいて楽なんだ。
*
「あ、またあたり」
「ゲッ、昴ずるいぴょん!」
「うっさい!5回連続でハズレ出す方が悪いんだろうが!」
今日がとうとう霧の試合当日。雲雀恭弥を見に行ったクロームに手を振り、私と犬はあたり付きのガムをビリビリと破る。
ぶどうの味のガムを口に放り込む私の隣で、犬は2〜3回噛むとすぐにガムを飲み込んでしまった。腹壊しても知らないぞ。
ため息をつく千種にケラケラと笑い、なかなか帰ってこないクロームを待つ最中に駄菓子屋を見つける。手持ちのガムが全てなくなったということもあり、犬はすぐに飛びついた。
「っひゃー
このガムうまそー!」
「さっき買っただろ?」
嗜めるように言う千種。あんまり気にするとハゲるぞ。
「らってガムってフルーティーだからみんなのっくんじゃうんらもん」
「そんな理由で食べるのはお前くらいだけどね」
「うっせ!昴は黙ってろ!」
ベシッと頭を叩かれる。そんな私達を見て、諦めたように千種は財布に手を伸ばした。
「じゃあ一箱買ってこ」
「当たり付きのイチゴ!」
「じゃあ私はラムネ!」
便乗して頼んでみたら、ふと後ろから聞き覚えのある声
「箱で買ってる!どんな奴らだよ!!」
…あ、まさか
お金を払う千種を置いて私と犬は声の方へと向かった。
「相変わらずムカつく面してんな
んぁ?!」
「脅すなって、アホ。」
「ぎゃー!!!
でたー!!!」
ドサッと地面に倒れた彼___沢田綱吉。
ゲシゲシと足蹴をする犬には見て見ぬ振りをしておく。いいぞもっとやれ。
「ちゃおっス」
「…げ」
「久しぶりだな
柿本千種、城島犬、辻井昴」
足元にちょこんと現れたアルコバレーノ。一歩引けばその代わりに犬が絡みに行った。
「もう1人はどーしたんだ?
ツナの霧の守護者は」
「雲雀恭弥を見に行ったよ。もう随分時間が経つけど。」
「あいつがか…?
ヒバリに見つかったら大騒ぎになるぞ」
「まあその時はその時でしょ」
私には関係ないし、と笑えばそれもそうかとアルコバレーノは椅子に座った。それ故寄せとラムネをたかられたが、絶対やらん。その代わりにぶどうのガムを投げてやったのに、アホ牛を思い出すからと返された。アホ牛って誰だよ。