オルトレマーレの星ひとつ
▼23
「っ!」
身体にいくつもできる傷跡。
追いかけてくる復讐者と、彼らの放つ銃らしき弾。息が上がるがここで止まっては彼らに追いつかれてしまう。
ドスン、崖を飛び降り草原へと。
結構な高さだというのに、復讐者は何てことなさそうにすぐにこちらに向かってきた。
「骸様…もう追っ手が…!」
「あいつら、早すぎ…!」
「ダメれす!逃げられないぴょん!」
「クフフ…
流石鉄壁と言われる復讐者の牢獄…伊達じゃありませんね…」
迫る復讐者に、骸くんはある決断をしたようで。
「ここからは別れて各々で逃走しましょう。僕一人ならなんとかなりますが、お前たちがいては足手まといだ」
さあ、先に行きなさい。と骸くんは急かす。
「なっ…!」
「骸様!何言ってるんれすか!」
「…千種、犬、行こう。」
「昴!バカなこと言うなぴょん!」
「犬、僕の言うことが聞けないんですか?」
「っ…!」
「早く!私たちがいかないと…!」
気をつけてね、と言葉を残して、私たちは走り出す。
先に行け、その言葉の意味を理解できないほど私たちは馬鹿ではない。
囮に、なるつもりなのだ。
きっと私たちが逃げ切らなければ、骸くんもあそこを離れられないだろうから。
無事でいてくれ、そう祈りながら、足を動かした。