オルトレマーレの星ひとつ
▼22
あれから、約1ヶ月。
骸くんが冷たい床からふと立ち上がった。
「さて、そろそろここから出ますか」
なんてことないように言った彼に、私の手から千種の眼鏡が落ちる。
「あっ、やべっ」
「昴…」
ゴスッ
チョップをかまされた頭をさすればたんこぶらしきもの。千種の手最強かよ。
「しかし骸様…どうやって脱獄するつもりですか?」
「復讐者から逃げ切れるとは思えないぴょん」
「てか脱出経路も周りの地形もわかんないのに不可能でしょ」
私たちが口々にそう言えば、骸くんはいつものようにクフフと笑う。
どうやら策はあるらしい。
「この子に教えてもらおうかと」
骸くんの声とともに壁から出てきた一匹のネズミ。小さいそれは、骸くんの肩へと登ると小さく鳴く。
「三叉槍がないのでマインドコントロールで済ませましたが、やはり時間がかかってしまいましてね。
この子を使って周辺の調査をしました。下調べにぬかりはありません」
君たち…とくに犬は、隠し事が出来なさそうなので伝えていませんでしたがね。
全くもってその通りです。
さすが骸くんである。「あぁ、武器の場所も突き止めてありますよ。そこに寄ってから脱出しましょう」…この人ほんとに何者なんですかね。
*
復讐者が居なくなったのを確認してから、そっと牢獄を出る。
途中一つの部屋に寄れば、そこには確かに私たちの武器があった。
鎖鎌を手に取り、いつもの場所へと。
千種達も準備は終わったようで、骸くんに続き窓から飛び降りた。
「呆気なかったれすね」
「逆に…不気味だな」
犬の言葉通り、やけにあっさりと脱獄できてしまった。
ネズミくんとは先ほど別れ、私たちはなるべく遠くへと急ぐ…が
ドォンッ!
背後から聞こえた爆発音。
ああ、見つかったのか。
「犬、千種、昴、急ぎますよ」
戦ったら勝ち目はない。
闇夜の中を、駆け出した