オルトレマーレの星ひとつ | ナノ
オルトレマーレの星ひとつ
▼22

あれから、約1ヶ月。

骸くんが冷たい床からふと立ち上がった。

「さて、そろそろここから出ますか」

なんてことないように言った彼に、私の手から千種の眼鏡が落ちる。

「あっ、やべっ」

「昴…」

ゴスッ

チョップをかまされた頭をさすればたんこぶらしきもの。千種の手最強かよ。

「しかし骸様…どうやって脱獄するつもりですか?」

「復讐者から逃げ切れるとは思えないぴょん」

「てか脱出経路も周りの地形もわかんないのに不可能でしょ」

私たちが口々にそう言えば、骸くんはいつものようにクフフと笑う。
どうやら策はあるらしい。

「この子に教えてもらおうかと」

骸くんの声とともに壁から出てきた一匹のネズミ。小さいそれは、骸くんの肩へと登ると小さく鳴く。

「三叉槍がないのでマインドコントロールで済ませましたが、やはり時間がかかってしまいましてね。
この子を使って周辺の調査をしました。下調べにぬかりはありません」

君たち…とくに犬は、隠し事が出来なさそうなので伝えていませんでしたがね。

全くもってその通りです。

さすが骸くんである。「あぁ、武器の場所も突き止めてありますよ。そこに寄ってから脱出しましょう」…この人ほんとに何者なんですかね。



復讐者が居なくなったのを確認してから、そっと牢獄を出る。
途中一つの部屋に寄れば、そこには確かに私たちの武器があった。
鎖鎌を手に取り、いつもの場所へと。

千種達も準備は終わったようで、骸くんに続き窓から飛び降りた。



「呆気なかったれすね」

「逆に…不気味だな」

犬の言葉通り、やけにあっさりと脱獄できてしまった。
ネズミくんとは先ほど別れ、私たちはなるべく遠くへと急ぐ…が

ドォンッ!


背後から聞こえた爆発音。
ああ、見つかったのか。


「犬、千種、昴、急ぎますよ」

戦ったら勝ち目はない。

闇夜の中を、駆け出した
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