オルトレマーレの星ひとつ
▼20
今思い出しても、あの光景はぞっとするよ。幼い子供に見せるものじゃないって、あれは。
…あぁ、話が逸れたね。
ボスも両親もみんな殺された後、私は1人エストラーネオファミリーに連れて行かれたんだよ。
きっと、餓鬼で反抗しても抑えられるし、実験材料にでもなると思ったんだろうけど。
…で、そこからは城島や柿本も知ってる通り。
皆みたいに実験台にされて、骸氏に助けられたんだよ。
*
ぼそぼそと全てを語る。
「なんで、言わなかった…」
柿本のその言葉に、私は苦笑する。
「柿本も、城島も…マフィアは嫌いでしょ?
2人は、エストラーネオに望んで入ったわけじゃない。
でも、私は違うんだよ。勿論エストラーネオに入ることは望んでなかった。
でも、リトゥニアファミリーに私は居たんだ。
エストラーネオファミリーとの抗争がなければ、今もきっとリトゥニアファミリーに居た。
私は…君達の嫌いなマフィアだよ。
だから、隠してたんだ」
骸氏には、『昴、何か隠してませんか?』なんて聞かれてすぐにばれちゃったけどね。
そう付け足せば、骸氏は「昴はわかりやすいんですよ」なんて笑った。そんなこと言うのは骸氏くらいだろうと思ったが、何も言わないでおいてやる。
「…バカ野郎!」
バシッ
城島に、思い切り頭を叩かれた。
「…」
ゴッ
その後に続けて柿本のチョップ。
「いっ…た…」
めちゃくちゃ痛い。やっぱりマフィアだということに怒ったのだろうか
と思っていたら、グニっと頬を手で挟まれた。
「お前は、俺たちの仲間の辻井昴だぴょん!
リトゥニアとかエストラーネオとか関係ないんら!」
「…どうでもいい、昴は昴だし。」
「え…」
それは、ここにいるのを認めてくれるということなのだろうか。
骸氏の方を見れば、クフフフ、といつもよりもフを多めにして笑われた。
「犬と千種の言う通りです。
昴、ここにいてもいいんですよ」
「…っ!」
受け入れて、くれた
マフィアだった私を
私は私だと言ってくれた
じわり、目尻が熱くなった