オルトレマーレの星ひとつ | ナノ
オルトレマーレの星ひとつ
▼20


今思い出しても、あの光景はぞっとするよ。幼い子供に見せるものじゃないって、あれは。

…あぁ、話が逸れたね。
ボスも両親もみんな殺された後、私は1人エストラーネオファミリーに連れて行かれたんだよ。
きっと、餓鬼で反抗しても抑えられるし、実験材料にでもなると思ったんだろうけど。


…で、そこからは城島や柿本も知ってる通り。
皆みたいに実験台にされて、骸氏に助けられたんだよ。



ぼそぼそと全てを語る。

「なんで、言わなかった…」

柿本のその言葉に、私は苦笑する。


「柿本も、城島も…マフィアは嫌いでしょ?

2人は、エストラーネオに望んで入ったわけじゃない。
でも、私は違うんだよ。勿論エストラーネオに入ることは望んでなかった。
でも、リトゥニアファミリーに私は居たんだ。
エストラーネオファミリーとの抗争がなければ、今もきっとリトゥニアファミリーに居た。


私は…君達の嫌いなマフィアだよ。

だから、隠してたんだ」


骸氏には、『昴、何か隠してませんか?』なんて聞かれてすぐにばれちゃったけどね。


そう付け足せば、骸氏は「昴はわかりやすいんですよ」なんて笑った。そんなこと言うのは骸氏くらいだろうと思ったが、何も言わないでおいてやる。


「…バカ野郎!」

バシッ

城島に、思い切り頭を叩かれた。

「…」

ゴッ

その後に続けて柿本のチョップ。

「いっ…た…」

めちゃくちゃ痛い。やっぱりマフィアだということに怒ったのだろうか
と思っていたら、グニっと頬を手で挟まれた。

「お前は、俺たちの仲間の辻井昴だぴょん!
リトゥニアとかエストラーネオとか関係ないんら!」

「…どうでもいい、昴は昴だし。」

「え…」

それは、ここにいるのを認めてくれるということなのだろうか。
骸氏の方を見れば、クフフフ、といつもよりもフを多めにして笑われた。

「犬と千種の言う通りです。

昴、ここにいてもいいんですよ」


「…っ!」


受け入れて、くれた

マフィアだった私を

私は私だと言ってくれた


じわり、目尻が熱くなった
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