オルトレマーレの星ひとつ | ナノ
オルトレマーレの星ひとつ
▼18

急に水でもかけられたかのような感覚。びっくりして目を覚ませば、ひんやりとした床の感覚に眉を顰めた。
記憶の糸を辿る。ここが復讐者の牢獄だと理解するのにそう時間はいらなかった。

あたりを見渡せば、ぐったりと壁に凭れる骸氏たち。よかった、幸い血は止まっていた。

「骸氏、起きて」

最初に骸氏を起こそうとして、ペチペチと頬を叩く。この人低血圧だから起きてから意識がはっきりするの遅いんだよな…

「…げほっ……昴…?」

「あ、起きた」

流石に体の痛みで寝続けるというわけにはいかなかったらしい。というかそれどころじゃない。

「ここは…復讐者の牢獄ですか?」

「多分ね。柿本と城島もそこにいるよ」

少し離れたところにいる2人を指差せば、おやおや、と言葉を零しながら骸氏は2人に向かって声をかけた。

「起きなさい、犬、千種」

その一言でパッと目覚めた柿本と城島。こいつら凄い。というか怖い。


「骸さん!」

「あれから…何が?」

骸氏が無事だったことに興奮する城島とは裏腹に冷静な柿本。きっと彼も骸氏が無事だったことに喜んではいるのだろうが、いかんせん今の状況が最悪すぎる。

だいたい大きさは四方5mというところだろうか。4人で入るには若干狭いその牢の廊下側一面には、鉄格子がはまっている。向かいの牢は空で、周りの声も聞こえないのが不気味に感じながらも、骸氏たちの方を向いた。


「…元エストラーネオファミリー、六道骸」

「「「「っ!」」」」

いきなり背後からかけられた声。慌てて振り返れば、そこには1人の復讐者の姿が

(全く、気づかなかった…)

気配を消したのだろうが、私や城島、柿本はともかく骸氏までもが気づかないとは。
黒いコートから伸びた手は、一冊の本を持っていた。

「元エストラーネオファミリー、柿本千種」

「…」

「元エストラーネオファミリー、城島犬」

「なんなんだぴょん…」


確認、なのだろうか。本に書いてある情報と照らし合わせているのだろう。


「元エストラーネオファミリー…兼元リトゥニアファミリー、辻井昴」

どくん、心臓が音を立てて跳ねた気がした。
骸氏達より一つ多い、元ファミリーの名前。

それは確かに昔、私が所属していたファミリーで。

骸氏以外、誰にも言っていない過去の古傷だった
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