オルトレマーレの星ひとつ
▼16
目が覚めたら、目の前にいたのはボンゴレ十代目と倒れた骸氏だった。
あの後雲雀に応戦したが、あっけなく瞬殺…のはずだったのだが、ここにいるということはきっと骸氏が憑依弾を使ったのだろう。疲労と傷で立ち上がれないほどにボロボロな体に、苦笑した。
ここから骸氏の表情は見れないが、ボンゴレ十代目がいるのは骸氏のすぐそば。何をされるもんかわかったもんじゃない。
「骸…死んでないよな?無事だよな?」
「ったく甘いな、お前は」
そう言って骸氏の方に歩み寄ろうとするボンゴレ十代目。させるか。近づくな。
ずり、と体を引きずり制止の声を掛けようとしたが、それは城島も同じだったようだ。
「近づくんじゃねえぴょん!」
城島と柿本も地を這い骸氏の元へと向かう。
どうやら別方向から向かう私のことにも気づいたらしく、彼はひぃっと声を上げた。
「な、なんでだ…?
なんでそこまで骸のために?君たちは骸に憑依されて利用されてたんだぞ」
「わかったような口をきくな…」
「私たちが、それを望んだんだ。君に口出しされる筋合いはないよ…」
「だいたい、これくらい屁ともねーぴょん。あの頃の苦しみに比べたら」
「あの頃…?」
「何があったんだ?言え」
アルコバレーノのその言葉に、城島の口からへへっと笑い声が漏れた。
「俺らは自分のファミリーに、人体実験のモルモットにされてたんだよ」
目を見開いた2人。きっとアルコバレーノは、そのファミリーについて知っている。
「やはりそうか。もしかしてと思っていたがお前たちは禁断の憑依弾を作ったエストラーネオファミリーの人間だな」
ほらね。だが、その言葉には少し間違いがある。
「元、だよ。あんなところは」
城島は全てを語る気でいるらしい。口に出した言葉は、どれも懐かしいものだった。
私なんかは、まだ優しかった方だ。薬と武器の実験台。私が使っている鎖鎌だって、元はあそこのものだった。
城島はチャンネルの研究に使われ、柿本は手足に火をつけられ。居場所なんてどこにもなかった。
それを変えたのが、骸氏。
皆を殺し私たちに居場所をくれた。
「昴」
私の名前を、呼んでくれた
「それを…おめーらに壊されてたまっかよ!!」
城島はそう叫ぶ。だが、
「でも…俺だって…仲間が傷つくのを黙って見てられない…
だって…そこが俺の居場所だから」
ボンゴレ十代目のその言葉に、私は唇を噛んだ。わかってる。彼の居場所を私たちが脅かしたことくらい。それが彼にとって傍迷惑なことだったということくらい。
その時
ガシャッ
首元に、何かが嵌った。