オルトレマーレの星ひとつ
▼11
ガタ、という音に骸氏は顔を上げる。
「ああ、千種ですか?」
「柿本、遅かったじゃん」
めんどいという割にはずいぶん長く戦っていたようだ。
しかし、部屋に入ってきた柿本の姿で納得する。どさっと倒れたその体は、血と火傷まるけ。
「おや、当たりが出ましたね」
嬉しそうに骸氏がそういった直後に、城島も部屋へと入ってきた。ちょうどいい、呼びに行こうかと思っていた所だったし。
「千種きましたー?…あら!
っひゃー、だっせー!血まみれ黒コゲじゃん!レアだよレア…」
「その焼き加減だとミディアムでしょ」
「ひゃひゃっ、昴うめーの
…ひゃっ、血ぃうまそ!」
「噛むな、犬!」
柿本を噛もうとした城島を骸氏が止める。私にはその趣味が理解できない。人の血って不味そうだし。
「気を失ってるだけです。ボンゴレについて何もつかまず千種が手ぶらで帰ってくるはずがない。
目を覚ますまで待ちましょう」
昴、千種をベッドまで運んでおやりなさい。
そう続けた骸氏に顔を顰めた。そこは城島にやらせようよ。なんで女がそんなこと、と思ったが、仕方ないので柿本を担ぎベッドへと運んだ。
柿本は身長の割に体重がないので楽勝だが、もしこれが城島だったら私は放り投げてた。
ベッドの隣の小さな椅子にはフゥ太の姿。
もはや日課になりつつある強制水摂取を済ませ、これまたなぜか日課になっている頭を撫でると、フゥ太が小さく口を開いた。
「……にぃ」
「?」
フゥ太に兄なんていたのか、はたまたただの兄貴分か。名前の方は聞き取れなかったが、フゥ太の大事な家族、だろうか。
この子が今どうしているのか、と身を案じている人がいるかもしれない。
そう考えてから首を振る。何バカなこと考えてるんだ、私は。
なかったことにして骸氏たちのところへと戻る。チクチク痛む胸には気づかないふりをした。