オルトレマーレの星ひとつ
▼06
21位はびっくりするくらい弱かった。いや、並盛の中では強い部類なんだろうけど。
やっぱり実戦経験の差だろうか。一般市民と私たちでは、踏んできた死線の数が違うというのは、わかりきったことだったが。
歯を21本抜いてそこらへんに捨てる。しっかりと1本1本数えたから数え間違いはないはずだ。
それに満足して、黒曜ランドへと戻る。
既に城島と柿本は帰っており、城島は私を見つけると顔を顰めた。
「昴!遅いぴょん!」
ゲームをいじっていた手を止めて私の方へつかつかと歩いてくる。なんだ、どうしたというのだろうか。
「俺はもう20位から13位まで狩り終わったんらぴょん!21位なんかに手間取りすぎらっての!」
そうまくし立てるとぐいっと頬を摘まれ、伸ばされた。思ったより痛い。
「離してよ、城島…」
「うるせーぴょん!」
なるほど離す気はないらしい。ならば力ずくで手を離させるだけである。
思いっきり脛を蹴りそのまま飛び退けば、城島は涙目になって足をさすっていた。ざまぁ。
「昴!脛はだめらぴょん!めっちゃ痛い!」
よく吠える犬だなー、と軽くスルーしてから柿本へ声をかける。
「柿本は何処まで終わった?」
「6位まで…面倒くさかった…」
眼鏡をクイっと上げる柿本。確かに面倒くさいことを嫌う彼にとっては6人に1日で奇襲を仕掛けるのは面倒なだけであろう。城島は喜びそうだけど。
「じゃあ次は5位か…」
「笹川…了平」
「俺の獲物らぴょん!」
いつの間に復活したんだお前。丈夫すぎるだろう。城島を冷めた目で見ていると、ふといい案が浮かんだ。私ももうちょっと楽しみたい。
「…じゃあそれ私が狩ってくるよ。」
「は?!なんれらよ!」
「別に城島、5位の笹川って人を特別狩りたいわけじゃないんでしょ?どうせあんた2位狩れるからいいじゃんか。」
5位くらい私に頂戴よ。
しぶしぶ承諾した城島。こうして(無理やり)5位狩りの権利をゲットし、私はくるりと背を向けて黒曜ランドをあとにした。