私怨だけは忘れない
嘘は周囲を散策していた。
先ほどのことはすっかり脳内では無かったことにしている。
人を見つけては昏倒させたり、殴ったりと、意外と出来ることはあるのだが、臆病な為大抵が不意討ちばかりである。
カメラルームから破壊音が響いた為、しばらく待ってから中を覗いたが、以前見た時とは比べ物にならないくらいの損傷が見られた。
これは買い直しだろう。
嘘は弱い頭でそう結論付ける。
大半の機能を奪っているのは植物だが、それに追い討ちをかけるように何かで撃ち抜かれた後が克明に残っている。
何に撃ち抜かれたのかは定かではないが、植物とは明らかに手段が違いすぎる。
「……なんだかな」
ぼそぼそと嘘は呟く。
他の一行がどこにいるのかはしったことではないし、ついていく気力もないため、電話などの連絡も全く手を着けない。
それに、楽や喜には助けを求めた時に適当にあしらわれた、私怨もある。
嘘は物忘れが激しい人間だったが、私怨に関しては人一倍の記憶力を持っていた。
「ん」
カメラルーム内を散策していると、水で濡れてはいるが、文字ははっきりと読める資料が数枚見当たる。
嘘はそれを回収し、どこかで乾かせないかと画策する。
ぺたんぺたん、と情けない音を立てながら、嘘は迷路のような研究所内を歩いて行くのだった。

続く
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