半円の片割れ
「……おや、電話来てましたかぁ……」
涅槃は電話を取り、メッセージを聞き取る。
古式から送信されたメッセージはテンプレート通りの文章で、いささか緊急性に欠けるきらいがあるが、現在の研究所内の状況から何が起きたのかは想像するのは容易い。
勿論固定のプログラムによって転送されたメッセージであるからして、古式からの返信はない。
録音なので当たり前なのだが、少々残念そうに涅槃は電話を切る。
走るのは好きではないので、ただただのんびりと、何事もないかのように歩いていく。
実際は非常事態であるのだが、涅槃にとっては取るに足りない。
他の奴らがなんとか出来るだろうことを、既に計算に入れている辺りが甘いのだが、元々そういった思考の持ち主なので仕方がない。
荷物を取りに行った悟と喜、他は研究所内に居るだろうか。
ぼんやりと思考をめぐらしながら、涅槃は歩みを進める。
「……愚生に今のところ出来ることはありませんしぃ、他のことでも考えますかねぇ」
そういいつつ、涅槃は電話をいじる。
番号を入力し、コール音が鳴り響き、二回目のコール音で目的の相手は応答した。
「もしもしぃ……嘘……古式のところに行ってくださいなぁ……えへ」
口のなかで呟くような指示を自分のクローンに出し、涅槃は一方的に電話を切った。
「さぁて、どうなりますかねぇ……へへへ」
にやりと笑った涅槃はこの状況を少しばかり楽しんでいた。

続く
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