不鮮明なる座標軸
音量を調整していないブザーが鳴り響いている。
古式は通報のボタンを適当に押して音を止める。
異常な虹彩を持つ瞳が複数のカメラを捉える。
どうやらなにかあったらしい。
情報の収集と、それを利用した援護のみを指示されているため、ここから退く事はしない。
カメラから送られてくる映像の鮮明さはあまりよろしくないが、記憶力によって誰が誰だか見分けはつく。
赤毛の男が紐のような物を使っている部分を見つけ、口の動きを判別しようとするが、不鮮明な画像のせいで母音程度しか判別ができない。
古式はそういった状況に苛立つような様子はなく、冷静であった。
先程テンプレート通りのメッセージが送信されるように仕組んだのだが、涅槃が応じたかどうかは定かではない。
そもそも好きなようにしか動かない人間なので、自分の意図した通りに動いてくれるような事はほとんどない。
古式はため息をついて、カメラからの映像に目を凝らす。
数個壊されたようなので修復の指示であるメッセージを複数人に送信する。
こちらも応答はないが、誰か一人が応じてくれればなんとかなるだろう。
「邪魔しないでくれます?」
ぼそぼそと語る声は誰に語りかけたのか。

続く
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