長い夢をみていたようだ。ゆっくりとまぶたを開けると、沈みかけた夕日と、相変わらず手を伸ばしてくる巨人が目に入った。この木は細くて高い。巨人が手をかけた枝はすぐにぽきりと折れてしまって、またひとつ私を食べる未来が遠のいた。
刃は折れたものがひとつ。ガスはない。助けもこない。壁ははるか遠くにあって、食べられた片足は血を流し続けている。痛みはもうなかった。
巨人に食べられることは避けたいと、ワイヤーで体と木をぐるぐる巻きにする。力を抜いても倒れないことを確認して、折れた刃をかまえた。怖い、死にたくない。だけど、あの未来があるのなら。渇望したあの未来があるのなら、きっと私はやり遂げられる。
「さよなら、また明日」
きっとくる幸せな日常に思いを馳せて、震える腕で刃を胸に突き立てた。
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