見慣れた教室。朝の光。どうしたのかと驚くクラスメイトは目に入らなかった。すこしでも心を軽くしてほしいと思って言ったのに、あそこでも今でもライナーの泣き顔を見るなんて思わなかったな。



「思い出したよ。遅くなってごめんね」
「……ずっと謝ろうと思っていた。謝って済むものではないが──本当にすまない」
「いいよ、ふたりとも一生懸命生きた結果だから。私たち、お互いの人生を、譲れないもののために生きたじゃない」
「約束を果たす。幸せにする、今度こそ絶対」



 やっぱり私にはこっちのライナーが合うみたいだ。
 抱きしめられてほうっとした途端、涙がでそうになって慌てて唇を噛みしめる。手放しで喜ぶ前に確認しなければ。



「私のこと、まだ好きでいてくれてるの?」
「当たり前だ。愛してる」
「私も、ライナーのこと愛してる。でも私、丸くなったっていうか腑抜けになったっていうか……それにこんなに長く付き合ってると飽きるっていうし、私より美人でいい子がいっぱいいるってわかってるでしょ?」
「ナマエほどいい女はいない」



 かあっと頬が赤くなるのと同時に、もう涙が止まらなかった。過去に帰った私も泣いているのだろうか。ひとり罪の重さに溺れそうになっているライナーと一緒に、わけもわからず。



「ふたりで幸せになるって約束でしょ? 私だけが幸せなんて嫌。ライナーも幸せじゃないと」
「──記憶が戻っても俺のそばにいてくれる。笑いかけてくれる。恋人でいてくれる。これ以上の幸せなんて、あるわけがないだろう」



 やっと、笑ったライナーの顔が見られたな。
 止めなかった私にも罪があるのだし、ライナーが罪滅ぼしをしていくというのなら、私も一緒に同じ道を行きましょう。ふたりでひとつの未来を歩むことが、ようやく出来るのだから。



return

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -