ひなたにいると、太陽がじりじりと肌を焼いてくる。肌は赤くなるだけで黒くはならないが、ひりひりして痛くなるのは嫌だ。いっそのこと真っ黒になって、このひりひりから開放されたい。あとジャケットを脱ぎたい。
 ぼんやりと騒ぐコニーを見ていると、視線に気づいたのかコニーがこっちに来た。さっきまで日の下でアルミンを巻き込んではしゃいでいたコニーの額には、うっすらと汗が浮かんでいる。



「どうしたんだよアルマ(名前)、そんなところでぼーっとして。暑くないのか?」
「あつい。いっそのこと肌を焼いて日焼けの痛さから逃れようと思ったんだけど、一向に黒くならないんだ。どうしたら黒くなるかな」
「アルマ(名前)って白いもんな。別にいいんじゃね? ライナーは白いほうが好きっぽいし」
「じゃあ今度、白い銃を考案してみる」
「なんで銃の話になんだよ」



 コニーに手を引っ張られて、どんどんアルミンから離れていく。アルミンは、コニーの突拍子のない行動には慣れていると言わんばかりに、涼しげな顔で手を振って見送ってくれた。もしかしたら、騒ぐコニーから解放されて嬉しいのかもしれない。



「コニー、どこへ行くの? もうすぐライナーとベルトルトが来る予定だったんだけど」
「じゃあ、アルミンに伝えてもらうか。おーいアルミン! オレたち井戸にいくからよ! ライナーに伝えといてくれー!」



 アルミンが了解と言わんばかりに手を振る。アルミンも来ればいいのに、金髪は動こうとせず見送ってくるだけだ。少し残念に思いながら前を向くと、コニーがいたずらっぽく笑いかけてきた。



「今日、暑いだろ? 次の訓練まで時間あるし、井戸で水浴びでもしようぜ。ジャンとマルコがもう行ってるはずだ」
「こんなふうに水浴びをしたことはないんだけど、どういうふうにすればいいのかな」
「そんなの、ふつうにすればいいんだよ」



 コニーがなぜか嬉しそうに笑った。

 体温の高い手に引っ張られてついた井戸には、ジャケットを脱いで腕まくりをしたジャンとマルコがいた。ブーツを脱ぎながら、ふたりが私を見る。コニーもジャケットを脱いで放り投げながら、桶のなかにある冷たい水に手を突っ込んだ。コニーがしたように指先を水に入れてみる。冷たい。



「アルマ(名前)も来たのか。ライナーはどうしたんだ?」
「来る前にコニーに連れてこられたんだ。こんな大勢で水浴びするなんて初めてだから、すこしわくわくするよ」
「それなら顔に出せよ。いつも無表情なんだから」
「感情を顔に出すのが苦手なんだろうね。ジャンとコニーは、表情がよく変わるから、ずっと見ていたくなる」



 ジャケットを脱いですこし離れたところにたたんで置く。ブーツを脱いでズボンをひざまで折り返して、どうせだからとシャツも肘までまくりあげた。こうしておけば肌が黒くなるかもしれない。
 コニーがふざけてかけてきた水で、服が濡れる。それもなんだか楽しくて、水をかけあうコニーたちの後ろで水を汲んだ。桶に手を入れて、手のひらを重ねて水鉄砲を発射する。うしろから狙撃されたコニーが驚いて振り返った。コニーの次にジャン、そのままマルコにも。顔に命中したそれに満足していると、コニーが水を振り払いながら詰め寄ってきた。



「ずるいぞアルマ(名前)! 百百中じゃねえか!」
「本物の銃が持てないあいだ、練習したからね。まだ衰えてはいないようで安心したよ」



 また次を発射しようと構える。コニーが慌てて避難する前に、大きな声がして後ろを振り返った。ライナーが慌てたように駆けてきて、ジャケットを脱いで押し付けてくる。



「なんて格好をしているんだ! 早くこれを着ろ!」
「水浴びをしてるんだよ。ライナーも一緒にしよう」
「アルマ(名前)、とにかく着てくれないかな? はらはらして、水浴びどころじゃないよ」
「ベルトルト、そんなことをしたら水浴びの意味がなくなってしまうよ。それにライナーのジャケットが濡れてしまう」
「いいから」



 ライナーに無理やりジャケットをはおらされて、ライナーのにおいに包み込まれる。濡れたシャツがライナーのジャケットに染み込んで、じめじめとした暑さになってきた。
 ジャンがドン引きしたようにライナーとベルトルトを見て、マルコも若干後ろにさがる。



「ライナー……おい、さすがにそれは……たしかにアルマ(名前)は女顔だけど、男だろ。そこまでしなくても……」
「ジャン、本当にそう言えるのか。シャツが濡れてはりついたアルマ(名前)を見て、襲いかからない奴がいないと、本当にそう言い切れるのか」
「それは……」
「それにアルマ(名前)だぞ。104期一の変人のアルマ(名前)だぞ。男にさわられても気付かないかもしれない。俺やジャンにいろいろ言うならまだいいが、万が一ロニーにでも言ってみろ。どうなると思う」



 いっせいに視線を向けられて、むっすりとジャケットを握る。シャツの下には肌着を着ているから、透けているのは肌じゃなくて肌着なのに。



「私だって、そこまで鈍くはない。あまり親しくない人や話したことがない人に不必要に触られたら、まず疑問や不快を感じるだろうね。私が気にしないのは、相手がライナーやベルトルトやジャンだからだ。マルコにさわられたら嬉しいし、コニーが相手だとまだすこし緊張するけど、さっき手を握られたときは気持ちよかった」
「……アルマ(名前)」
「ふれてもらえたら、寒くなくなる。とても気持ちいい。それは私のなかで限られた人物でしか感じられないし、簡単に増えるものでもない。だからライナー、それは杞憂だよ。私は最初から、ライナーにふれてもらいたいと思っているんだから」



 だからジャケットを脱いでもいいだろうか。視線でライナーに尋ねるが、ライナーは真っ赤になって立っているだけだった。ベルトルトもジャンもマルコも、コニーまで驚いたように赤い顔で私を見ている。
 ジャケットを脱いで腕にかけて、そこで気付いた。そういえば私は男になっているんだった。男に突然こんなことを言われたら、反応できないのも頷ける。

 とりあえずライナーにジャケットを返そうとしたところで、鐘が鳴った。授業があることを思い出して、慌てて靴下をはいてブーツに足を突っ込む。ジャケットなんてはおっている時間はない。
 慌てて走り出すと、ライナーが手を握ってくれた。遅れがちな私を誘導するように引っ張ってくれるのが嬉しくて、遅刻しているのに心がはずむ。あいている左手をベルトルトに伸ばすと、ちらっとライナーを見てから握ってくれた。

 
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