こっそり夜食を作るはなし。///

 夜。皆が寝静まってる深夜にくぅと腹が鳴り目を覚ましてしまった。水をのみ誤魔化そうとも思ったがおさまる気配はなく、諦め俺はそろりと寝室を抜け出し、共有スペースに向かった。

 キッチンの近くに手持ちランプをおき、食材を漁る。夕飯で余らせた米があった。冷めて固くなっている米をとりながらこれにしようと決める。余った食材は基本的に、こうしてひっそりと後で消費している。

 だいぶ固くなってる米をそのまま食うのも味気ないし、と考えて思いついた俺はそっと自室へ戻りとあるものを持ってくる。それなりに大枚をはたいてこっそりと買った摘まんでいた、でっかいチーズを抱えて戻り… 部屋の前でじっとりとこちらを見るウェザーに遭遇した。

「… … 太りますよ、そんなの食べたら」

 そんなことを言うウェザーには作ってやらんぞと脅しにもならない脅しをかけながら、ウェザーをつれてキッチンへ戻る。

「うるさかったか?」
「…いえ、喉が乾いて。水差しも空だったので取りに来たんですけど、ランプついてたから」

 あと米出てたし、と小さな声で答えながらウェザーが水を飲む。横目で見ながらドカッとチーズを設置し、キッチンに火をいれた。

「…そのチーズどうしたんですか?」
「…内緒だぞ」

 大の大人が抱え込まなければ持てないほどの大きさである半円形のチーズはすでに中身を抉るように穴が開けられている。切断面を上に向けて軽くチーズを削り、ウェザーの口に放り込むと「うわっ、なにこれうまっ」と声があがった。

 キッチンの火が暖まったのを確認しながら、余り物の玉ねぎとにんにくを軽く刻む。フライパンにバターを溶かし、玉ねぎが飴色になるまで炒めつつ、にんにくと米を投入。水分を飛ばすように炒めながら、味付けのためのブイヨンを溶かして米と玉ねぎにかけていく。バター、増やしてしまおう。ジュワァと音がたち、ふわりと香りが漂ってくるなか、バターをもう一欠片いれた。

「…内緒だぞ?」

 ウェザーはコップを片手に握りしめてじっとフライパンを見ている。にんにくの香りがたってきた辺りから、ウェザーの視線は釘付けになっていた。
 じーっと手元を見てくるウェザーが一瞬顔をあげて頷いたのを見て、フライパンを火から引き上げて仕上げに取りかかる。

 くつくつと煮たった米たちを、チーズの器へと注ぎ込む。ぎょっとした顔をしたウェザーが「ま、まさか」と震えた声をだした。そうとも、そのまさかだとも。

 あらかじめ多少削ってあったチーズを上にまぶしてやる。熱々の米に触れた端からチーズが溶けて消えていく。ヘラを取りだし米をかき混ぜるほど、その熱で回りのチーズは溶けて溶けて、米と混ざり合う。熱が覚めてきたところで皿に盛り付け、特製のチーズリゾットが完成した。

「ほら、出来たぞ」

 湯気のたつ皿と木製のスプーンを渡す。薄明かりのランプに照らされるウェザーの目がなんとなくキラキラして見える。喜んでいる、といいが。
 自分の分も適当に皿によそい、直ぐにパクリと一口。まぁうまくできたな、と自分を誉めながら、服の隙間に差し込んで部屋から持ってきた酒もついでに傾けた。

「…それ…」
「水」
「…ルディさん」
「一口やるから許せ」

 ボトルの中身は赤ワイン。チーズにあうやつを持ってきた。ウェザーの手元のグラスに雑に注ぎ込めば、「赤ワインじゃないですか…」と聞こえた気がする。
 立ったまま、くぴりと一口飲む。一口リゾットを食べ、「ん〜… おいしい…」と呻くウェザー。「内緒にしてくれよ」ともう一度釘をさすも、「…ふぅん?何が内緒なんだ?」と足元から、声。

「……」
「……」
「…テオ…」

 ララフェル用のステップに乗りながら、まだチーズのなかに残っているリゾットをひと掬い。パクリとたべながら「おいしいっ」とテオドロが小さく声をあげた。
 にこっと微笑むテオドロに皿を差し出し、ヘラも渡す。ご満悦の様子で彼が器に盛り付けていると、部屋に「あーーー!!」とそれなりに大きな声が響いた。終わった。全員集合。

「ルディさんが旨いもの食ってる…!なんですかそのでっかいチーズ… えっ!?米!?なにそれ旨そう!?はっ、しかもウェザーさんワインなんか飲んで…!ず、ずるい!」
「…おまえの分もあるよ」
「本当ですか!?やったー!」

 さっさとテオドロが用意したザンセツの分を渡しつつ、ウェザーと目が合う。「ばれちゃいましたね」「ほんとにな」と互いに小さく笑いつつ、2つのグラスに新たにワインを注ぐのだった。

mae//tugi
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