先生とミントのお茶会///

「貴方は私のことが嫌いでしょう?」
 彼女は私にそう問いかけた。

 どうしてこうなったかわからないが、彼女……赤井リサと偶然郊外であった時には驚いた。彼女も同じような反応をしていた、と思う。時刻が丁度昼時だったこともあり、私は彼女と共にひっそりとした店へと入った。

 小さな店には私たち以外誰もいなかった。外の景色がよく見える席で彼女と向かい合う。しばらくは他愛のない近況について話していたが、勤め先が隣接しているだけにすぐに話すことも尽きてしまった。
 沈黙が嫌いではないのは私たちの少ない共通点かもしれない。

 暫しそうしていたが、彼女が先に口を開いた。唐突な問いかけに面食らうのは仕方がないことだろう。

「……そう見えますか?」
「えぇ。別に、怒っているわけでもなんでもありませんよ。ただ、どう思ってるのかと思って」

 たしかに、私は赤井リサのことが多少苦手だ。人の目を真っ直ぐと見据えて話すその姿勢すら、私にはあまりに恐ろしいものに思えることがある。彼女や……彼女と同じオズワルド様のその目に奥底まで見透かされていそうで恐ろしいのだ。いや、もしかすると、そんな私の考えなどとうに知っているのかもしれないが。

 だからと言って、私は彼女を嫌ってなどいない。

 たしかに、そもそも女性が苦手なことも手伝って彼女の前に立つと必要以上に緊張してしまう情けない面については承知のことだが……
 ……なるほど。確かに、いつもこれではそう思われても仕方ないのかもしれない。

「嫌ってなど、おりませんよ」

 思いの外、喉から出てきた声は掠れていた。肩に思わず力が入る。あぁ、やはり、この人を前にするとどこか怯えてしまうのだ。

「そうですか?」
「えぇ。むしろ、」

 むしろ私は、貴女を尊敬しているから。

 だから見ないで欲しいのだ。こんなにどうしようもく劣った存在が貴女たちの瞳に写ることさえおこがましいのに。あまつさえ、奥底にある醜い本質を見透かされるのではないかと思うと気が気ではないのだ。
 私はこれ以上、呆れられたくないのに。見捨てられたくもないのに。貴女たちはあんなにも気高く、美しく、眩いから。こんな私なんか。
 …あぁ、こんなことを思うことですら、烏滸がましいのに。ふと自嘲してしまう。いつまでたってもこれだ。

 私はただ、貴女に嫌われたくない、などと。

 かちゃん。カップが音を立てた。

mae//tugi
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