君の幸福を祈る(トゥルー後)///

◆シロ編トゥルー後

「…お、おはよう、ございます…」
「…… おはよう、シロ」

 朝になるとシロはいつも恥ずかしそうに挨拶をする。これがさらにスキンシップのある挨拶だと顔を赤くして隠してしまうので、ウェザーが苦笑いをする。それがすっかりと慣れてきた日常の景色だった。

 共に暮らすことにしてから暫くの時間が経って、まず驚いたのが彼女の… シロの性格の違いであった。
 ウェザーが知っていた姿は高圧的で高飛車、金遣いが荒く、ウェザーのことをペットと扱う奔放な性悪女…… といった姿であった。事実、街でもその悪評は広まっているほどだった。
 ウェザーはシロに拾われてからの間、彼女のその悪女然とした姿と、自身に対するあまりに献身的な姿の狭間でシロという女をどう判じればいいのか考えあぐねていた。

 それが、今では声をかければ小さく悲鳴をあげながら恐る恐ると様子をうかがい、手が触れるだけで恥ずかしそうに顔を赤らめる。反応としては、「生娘」と言ったほうがほよど正しい反応をする。それに、もはや永眠を願い死を待つだけだったウェザーのことを全てを投げ出してでも救い出したうえに献身的な世話を続けるほどのお人好しでもあった。
 とてもではないが、ウェザーのことを「都合のいいペット」として扱い、時に組伏せて情事を強要するような人物とは、あまりにも結び付かないほど真逆の性格だったのだ。

 人生をかけて、ウェザーという人物を騙し続けようとした。それがシロという娘が決めた道だったのだ。
 最も、彼女のたったひとつの失敗によりその未来は瓦解するに至ったが、その綻びさえなければウェザーは彼女の姿を知ることはなかっただろう。


「…まだ慣れないのか?」
「…な、なれません…」
「俺のこと、押し倒したりしてたのに…」
「ま、まだ怒ってるんですか…?」
「…違うよ。俺のことを押し倒して襲うようなおっかない女の子だと思ってたし… 本当に、よくあんなに化けてたなぁって感心してるんだ」
「すみません…」

 しゅんとした様子で小さく顔を下げたシロの頭に手をおいて優しく撫でた。シロはびくりと身をこわばらせたあとに、恐る恐るとウェザーの手に両手を添えて、その手にわずかに力をこめた。その間にもちらちらと不安そうにウェザーをみるシロに、ウェザーはなにも言わず微笑む。彼の表情を確認してほっと息をついたシロはウェザーの手のひらを頬の位置まで下ろさせ、柔らかくその手をつかみながら頬を寄せた。
 手を繋ぐだけでも顔を赤くするシロが、唯一自分からするスキンシップがこれである。ウェザーは驚かせないように息を小さくしながら、彼女が嬉しそうに目を閉じてすり寄るのを見つめていた。






◆破瓜の話(数年後とか)
「そういえばシロ」
「…? はい」
「昔さ、俺のこと押し倒して襲ってきただろ」
「…そう…だね?」
「こんなこと聞くのも失礼とは思うけど… シロって他に恋人とかいたのか?」
「えっ? いないよ」
「えっ?」
「? 私、あの…ウェザーくんが初めてだけど… なんでそんな話を?」
「…い、いや、待て、シロ… 俺が初めて?」
「??? そう…ですけど…??」
「… …処女ではなかったよな?」
「? う、うん。あの時は、その… 襲うのに処女だとおかしいから… 自分で破っておいたけど… えっ、ウェザーくん!? その顔なに!?」
「…… ……あれで、実質処女だったのか……? あれで…?」
「や、やだ、急にどうしたの…? は、恥ずかしい…」
「手慣れた感じだったし、てっきり男遊びしてる女だと思ってたのに…」
「し、しししっ、してないです…!」
「だってあんなにうまかったから…」
「! …そ、それは、そのぅ… 教えてもらって… そんなに、よかった?」
「え、あぁ…うん、なんか俺も恥ずかしくなってきたんだけど… その…まぁ、イかされたし…気持ちよかったけど」
「…ふふふ、よかったぁ。街にね、有名な娼館があるでしょう? あそこに行ってね、一番のお姉さんに教えてもらったの」
「そ、そんなことまでしてたのか!?」
「ひゃっ… え、う、うん… 上手にできてたの、うれしい」
「……(この性格と体で娼婦仕込みって…)」
「…? ウェザーくん…?」
「あ、いや…」
「…あ、あのね、だからね、その… 私、ウェザーくんしか、し、知らない、で…す…よ?」
「…… シロぉ、お前… はー、お前…ほんとそういう…」
「え?え?ウェザーくん?え?えぇ…??」




◆呼び方
「あ、あのぅ…ウェザーさん」
「シロ、その呼び方どうにかならないか?」
「えっ!?え… えぇ?」
「…オレはシロって呼んでるのに、なんか、むず痒いというか…落ち着かないというか…」
「えっ、えっ… 何て呼べば…?」
「えっ?普通に呼び捨てでいいよ、ウェザーって」
「えっっっ!?む、無理です…!!」
「なんで…」
「は、恥ずかしい…」
「恥ずかしいって。ほら、呼んでみて」
「うぅ、ぅ、うぇ、うぇざ、さ…」
「シロ」
「…ううううぅ…ウェっ、うぇざ…」
「ん」
「ウェザー… … …さ、…ぅう… くん…」
「…うーーーん、もっかい」
「えっ!?ぅっ… ぅ、うぇっ、ウェザーくんっ…!」
「…くん、かぁ… まぁ、それでいいとするかな」
「…うう、恥ずかしいよぉ…」
「…ねぇ、シロ、もう一回」
「!?」

mae//tugi
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