白い見慣れた部屋だ。自分の部屋。壁には何も貼ってはいない。全部剥がしてしまった。壁に貼っていた写真の被写体がぺりぺりと、一枚も残さず。
「……すきだよ」
けど、僕は何も言わなかった。彼女が心底嫌だと。そう言ったのだ。だから仕方が無いと思いながら、奥にすべてしまったのだ。
「…ほん、とうなんだよ」
これでいいんだろう。すべて片付けてしまうと、白い白い壁に目が眩んだ。白なんて僕にはこれっぽっちも似合わなくて、圧迫感を感じる。君の姿が、部屋の何処にもなくて、何処にも何処にも居なくて居なくて。
「すき、なんだ」
まるで、見捨てられた気持ちだ。ああ、いや、わかってはいたんだ。こんなことを繰り返したとこで、君が振り向いてくれるなんてことはあり得ないのも。まして、僕と仲良くしてくれるだとか、同じような気持ちをくれるだとか。あり得ないって、本当は知って。だけど、今更気がついたら僕はどうしたらいいのか。怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて、気がつかないようにして。
「…だ、から…」
置いていかないで、なんて。
口に出すことさえ許されないような。
そんな、気がするのだ。
蹲る。縋りつくように、頭を抱えるように。部屋の中でぽつりと怯えるように。
*
べそべそぐずぐず。
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