「は?一番高いところ?」
「は、はいです」

ソファに沈み込みながら、テレビを見ていた野間にラブが声をかけた。急なことに野間はやや上ずった声で聞き返した。

「市内なら…あー…南のほうのビル群のどれかじゃねーの?あとは久希里山んとこのお化け鉄塔とか…夕日山の上にあるっつー化杉…とかいうやつ?」
「お化け鉄塔…?ばけすぎ…?」
「かなり前に作られて、今は使われてねぇ建物があんだよ。その建物の一部にでっけー鉄塔があって……頂上よりちと向こう側だから、知らねーやつは知らねーかもなぁ。」
「てっとう…ばけすぎ…は、なんです?」
「化け物みてーにでっけー杉の木が、夕日山の上にあるらしいぜ。夕日のほうは行かねーからわかんねーけどなァ…」

ラブが野間の隣に座った。テレビを見たまま、周囲の街並みを頭に描き出す。怠そうにだが、きちんと答えて行く野間へとどこかきらきらとした視線をラブは送り続けた。

「…じゃあ、近くなら…ビルか鉄塔です?」
「そうなるなァ。なんだ、行きてぇのか?」

テレビから視線を外し、野間はラブに聞く。躊躇いがちに頷いたラブを見てから野間はソファから立ち、乱雑に置かれていたコートを羽織った。近くにかけてあるラブの上着を持ち主へばさりと投げつける。

「わぶっ」

頭からばさりと視界を遮られるようにして投げつけられ、困惑の表情でラブは野間を見る。
いつの間にか出かける姿をしている野間が舌打ちをしたのが聞こえ、尚更困惑の色を強めた。
もたもたと渡された上着を羽織ってる途中、強引な野間がラブを担ぎ上げる。ひゃあ、と中途半端な状態で小さく声をあげた。
すぐそばにある野間の顔は、口布によって半分が伺う事ができない。見つめていれば、野間はじとりとラブを睨むように見返した。

室内ではあるが野間が一歩足を進めると、風が二人の髪を撫でた。前に出した足はすぅっと消え、それに連続して、歩くように進む野間たちの姿は部屋から消えたのだった。


すた、と歩いた先は遮るものがない鉄塔の上だった。
掴めそうな程近く感じる青空へ目一杯に首を曲げて仰ぎ見る。どうにかラブを肩に載せれば、感嘆の声とともにより近づいた空に手を伸ばした。

「のまさん!あおぞら!」
「…あァ。眩しい」
「あおい!です!」
「そーだなぁ」

眼下にはジオラマのように見える街が広がる。さわさわと山の爽やかな風に、二人の空に似た髪がそよいだ。








「のまさんありがとうです!」
「ちょくちょく助けられてるからなぁ。その礼だ。」
「おせわになってるのは、ラブですー」
「あーはいはい。」

「なんだって、空なんか見たかったんだ?」
「懐かしかったからです」
「懐かしい?」
「ラブたちがいたところじゃ、空はもう、青くないです。でも、ラブたちは空が青かったのを知ってたです。憶えてたです。二度と見れないって、思ってたんです。」
「……ここならまた連れてきてやるよ。」
「…はい、です。」




青髪と水色髪で、兄妹みたいだなぁーと。
野間の空間移動が便利すぎて…うらやま。
ちょくちょく助けられてる、っていうのは、ラブのメイン盾機能が久希里でも万全って意味で。なんせ、野間には逃げ足意外に取り柄がない。

mae//tugi
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