「のまさんは…やさしいです。」
「アァ?急にどうした」
野間が作った昼食。あまり広くないテーブルで向かい合いながら、テレビの音をBGMにのんびりと食べていると、ラブがぽつりと呟いた。野間は片眉を跳ね上げ、怪訝そうにラブを見る。
「…思っただけです。」
「流石になぁ…俺だって、お前みたいなチビを追い出すほど冷たい人間になったつもりもねぇからな。」
「…人間じゃないよーなラブでもです?」
ラブがゆるりと片手を持ち上げれば、その腕にある羽がばさりと音をたてる。首筋からは硬そうな蒼い鱗が見え隠れするし、小さいわりに彼女は嫌に力持ちだった。
野間はそんなラブを一瞥して、ずずーっとスープを啜る。
「そんくらい対したことねーよ。」
「…のまさん、やっぱりやさしいです」
「いいから早く食え。冷めるだろ」
「はいですー」
どこから来たのかも聞かない。体の異常も聞かない。常識が欠けてることも。いつも何かを警戒していることも。誰かを探していることも、なにもかも。
野間は一つたりともラブに聞いたことはなかった。
「のまさん、のまさん。」
「アァ?」
「おいしいですっ」
「そうかよ」
そしてこれからも、尋ねはしないだろう。野間も、ラブも。
その必要は無いし、いつか教えてくれると、互いに思っているのだから。
***
野間は野間で異能者なのを黙ってるし、ラブはラブでドールなのを黙ってる。
が、互いに能力については知ってるし、それで十分。
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