私の足元にはいつも彼女が跪いていた。
その後ろには幾人もの人間が跪いていた。
最初こそ楽しかったが、やがて飽きた。
本当にそう思っていたかと聞かれるとわからないと答えるが。
彼女たちは私を崇めていた。当然だ。
私は確かに、神だった。
今ではどうだろう。
忌々しい男はひっそりと隠居している。
その息子ものんびりと暮らしている。
私やあいつらは同じだ。同じだった。
眼下には無数の人間が跪き、私たちを崇めた。
供物を捧げ、呪文を唱え、儀式を行った。
それに気まぐれに答えた。それだけだった。
いまではどうだろう。
私にとどめを刺した忌々しい男は一度死んだ。
その息子はなにやら部屋にこもりきり。
私やあいつらは違う。違っていた。
それぞれが違う人間に執着して執着して。
ただ、それだけだ。それ以上が、ないのだ。
それが神なのだろうか。
だとすれば、なんとも人間は愚かだろう。
そして我々もまた、神でありながらも程遠い。
たった一言を知るのに、命を捧げた。
たったひとつを理解するために、全てを壊した。
そんな欠陥品が神だというのだから。
かつて彼女はそんな私をかみと崇めたのだから。
「悪いことをしたよ」
今でも借りているマンションの20階。
住み慣れてしまい、離れ難かった。
「今ならそう”思っている”よ」
彼女がよく座っていた椅子に座る。
デスクも、ベッドも、見慣れてしまった。
「感謝してる」
ひとりきりになってしまった部屋。
もう誰も私を神と崇めはしない。
「君には伝えようと思ってね」
独り言に見えることだろう。
だが、私には神の名残か、気配がわかる。
「愛してたと」
空気が揺れた。泣いているのだろうか。
バカと私を罵っているだろうか。
それでも今は、無数の賛美より心地よい。
私を神の座から引きずり落とした人間は二人。
一人は私と共に死んだ。この部屋から終わりを共にした。
彼女は始まりだった。
空気が揺れた。すぐそこに彼は来ている。
ここでなら、私は伝えられるだろう。
つたえよ。つたえよ。 つたえよ。
そう心に決めた。
扉があいた。
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イドル神さまやめすぎわろた的な話。
そんなんだから明一郎に殺されるんです。
ぷーくすくす。みたいな。
結局、久希里に住んでる神様たちは間違いなく神様だけど、それでも本当の神様には程遠い。そんな曖昧な存在。
でも人間よりは人智超えまくりなので、神と賞されざるを得ない。そんなやつら。
この辺りではすでにイドル2を経て、イドル復活済みだったり。色々思うところが出てきてしまったイドル。彼なりの謝罪とけじめを付けにきた。
そんな話にございます。
これ以降はがっつりと神様らしさを投げ捨て出すイドルくん。
mae/◎/tugi>