※戦国トリップ
※指桐ちゃん生首状態のまま


「はて、ここはどこでしょうか」

桐箱を大事に抱えている男が深い森に佇んでいる。あまり見慣れぬ装いだ。数刻前より突如として黒い霧が発生し、それが収まるとあの男が姿を現した。なにか怪しげな術でもつかう類とも言えないし、無関係やもしれぬ。だが、不気味な霧からでてきたのだから、少なくとも霧については知っているだろう。

「家にいたはずなのですがね…」

さくさくと足元の草が土が音をたてる。その歩き方は素人だ。一瞬で男の背後に立ち、その腕を捉えた。

「第一村人発見ですねぇ」

腕を捉え地面に引き倒した…はずだった。が、男は実に温厚温和を絵に描いたような笑顔で目の前に立っている。鳥肌がたつような気配を撒き散らしながら。その殺気とも牽制ともとれる気配に耐え切れず、即座に潜んでいた部下が飛び出した。彼らの手により今度こそ男は膝をつく。

「第一村人が忍者とは、恐れ入りました。」
「貴様、何者だ。」
「そちらこそ」

長とも違う類の笑みに今にも逃げ出したい気持ちに駆られる。だが、そういうわけにもいかない。部下の一人が男の持っていた箱を取り上げた。武器が入っていれば、男には間者の疑いがかかるだろう。機密事項などが入っていたら処分せねば。どちらにせよ、問い詰めなければなるまい。部下がゆっくりと警戒しながら蓋を開いた。中身を見る。「うわぁ」と情けない声と共に箱がゆっくりと地面に落ちた。箱が地面にぶつかる。
ぽろりと中身が転がり落ち、不快感を露わにこちらを睨みつけた。

「…どこ、ここ」

転がり落ちてそう言ったのは首だった。それはそれは美しい、汚れのない女性の首。普通ならあり得ない光景に目を疑った。その首の頬に少し、土が付着した。それと同時だった。鳥肌がたつ。

「ひぃっ、首が喋ったぞ!」
「…」
「なんだこれは!」
「…」
「妖の仕業か、貴様、何者だ!?」

部下たちが思い思いに男と首を紛糾する。地に押し付けられている男がその様子を見ていた。金色ともとれる目がゆっくりと、首へと向けられる。いつの間にか周囲の木々は、森は沈黙している。部下たちは気がつかない。駄目だ、今すぐその口を閉じろ。目を合わせるな。首に近づくな。武器をしまえ。声を聞かれるな。息を殺せ。心拍をも聞かれてはならない。地に平伏しろ。木の葉に隠れよ。鳥よりも早く逃げよ。それは、いけない。森が息を潜めている。だめだ。声がでない。逃げろとその一言が。足が地に縫い付けられたようだ。背に重石でもあるようだ。目の前にいるのはなんだ。人だ。違う。それは首だ。首だけだ。あれは。男は。あの目。怒り。怒らせた。口が。目が。動く。

「…」

逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ

「死ね」

瞬き。赤。黒い、影。 首が 目を  あわせ。








「これでよし、と。痛いところはありませんね?」
「うん。」

石の上に腰を下ろし、膝の上に指ちゃんを乗っけた。ハンカチでその頬を拭う。まったく、僕の指ちゃんを地面に落とすとはどういうつもりなんだ。髪に櫛を通し、結いなおす。さっと桐箱の汚れも拭き取り、指ちゃんの頭を撫でる。よし、綺麗になった綺麗になった。

「しかし、ここはどこなんでしょうかね」
「忍者がいるからなぁ…」
「現代ではなさそうですよね…まぁ…」

足元に転がる男を蹴り飛ばす。軽く動いた拍子にすぐそばにあった水たまりがびちゃりと音を立てた。その生ぬるい感触に男が目を開けた。これはいい。指ちゃんを桐箱から取り出したクッションの上に乗せてから立ち上がる。

「おはようございます、忍者さん。ご機嫌はいかがでしょうか」

手足はダメにならない程度に加減しつつもがっちりと拘束してありますから。逃げることなどできるわけがない。許さん。やがてぼんやりとしていた男もさっと周囲を見渡し、理解し始めたようだ。すぐに男の表情が変わった。

「あ、あぁ…」

驚愕の表情といった様子。目から光が遠のいていく。歯ががちりと音を立てる。やがてそれは絶望と哀しみを覗かせる。ああ、素晴らしい光景。そして、なんていい気味!

「当然の報いです。」

そう、それもこれも…僕の指ちゃんを地面に落とすからです。えぇ、ほら、やっぱり、当然の報いではありませんか!

「さて、あなたにはお聞きしたいことがあります。きっちりとお答えくださいね。そうしないとー…」

「あなたを殺します」とでもいうと思ったのでしょうか?いやまさか。そんなつまらないことはしませんよ。そうですね、こういった類のに有効な方法ならいくらでもありますが、今回は、「そこの生ゴミ、無理やり起こしますよ」そうしよう。「生ける屍になってもらって、ほかのところとか襲ってもらいましょうかね。」そういえば、ほら。すぐにそれだけは、とか。懇願してくるのです。



ね、簡単でしょう?




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光成くんにも出番を!と思ったら、なぜか戦国時代にタイムスリップしたでござる。の巻。

指ちゃんなんで生首なの?というと、光成くんの激し過ぎた独占欲の現れでこうなってます。甲斐甲斐しくお世話してくれるよ。
因みに、自室にボディも保存してあるので、頼めば普通に首を繋げてくれる、この謎能力。

mae//tugi
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