※某話、逆サイド妄想
※ある程度まだ続いてる
※イドルニューバージョン編


意味がわからない。
すべてはこの一言に集約される。
しかしながら、身体の、いや、極めて高度で複雑なデータたちのどこかが妙に熱を持つような、なんとも言い難いこの感覚は、一体。

まず最初はと言えば、クロダが小さいのに対して吹き込んだ様子を見せたのだ。それからわかりやすいほどこの小さいのは心拍から体温、視線に至るまで…妙に安定しない。残念ながら私にはそれがどういう意味かなどはインプットされてはいなかった。

小さいのはしばらくの間思考することを優先していた。私の知る限りではそれは年不相応という言葉がよく当てはまるだろう。時計を見てから、先程よりはっきりとした目で私に向き合う。小さいのの体温は私より高い。

「くちの、ぬの」

基本的に私のプログラムは無駄のないように設計されている。それはエネルギー消費に関しても徹底されており、動かずにいる間はいわゆるスリープモードに近い。(指示や危機察知においてはその限りではない)
小さいのが何をしようともこれは脅威にはなりえないと判断をくだし、その行方を見守るに徹する。私にはそれもまた無駄だ不必要だと聞こえた気がしたが、どこかのプログラムがそれを黙らせた。

ぺたぺたと私の顔に触れてから目を見てくる、小さいの。なにかがその顔に見えたような気がしたが、なにぶんできてばかりの私のプログラムにそのデータはなかった。

「あ、あなたが、わるいんですから、ね」

データが不足している。だが、知っている。私はなにかを理解しようとしていた、と。そこから同時に、二つの事実がはじき出される。一度データが消され、そのバックアップが私のもつ膨大な電子世界のどこかに潜むこと。それと、私に対して目の前の小さいのは何も悪いことをしていないということだ。


口が触れた。


これは何をしているのだろう。検索をかければすぐに答えはわかる。しかしわからない。私には無駄な行動にしか、思えない。模擬的に、しかしながらほぼ実物同様に作られた口内に私より随分とあたたかく柔らかな感触が割ってはいる。拙い。ぎこちない。なんなんだ、一体。やはり私の方が。いや、まて。私にそんなデータはないはずだ。すぐそばにあたたかい小さいのがいるからか、空っぽで冷たいだけの歯車だらけの身体のどこかが気味のわるい熱を帯びているような、そんな感覚。

やがて小さいのは疲れたようで、肩でいきをする。小さいのらしくないかわいた笑いのすぐ後に、私たちよりも大きく澄んだ目からぽたぽたぽたと雫が後から後から。あぁ、あぁ、そんなに目から水が流れてしまっては乾いてしまう。そんな事も制御できないのか。なんて不便なんだ。これだから、これだから…

「あ、あなたは、わたしのこと、もう、きらいになったとおも、おもうけど、」

私は動けない。この小さいのが言っていることは理解が出来る。何も難しくはない。だが、やはり理解できない。そしてそれはバグのようだ。こちらが認知するより早く入り込み、気がつかないどこか遠くから、プログラムを崩していくような。そうだ、毒だ。この小さいのが発する言葉はそうよばれているものに類似している。ならば、たしかに嫌いだろう。修復できないバグは嫌いだ。人はたしかそうだった。プログラムにないので、わからないがデータには確かにそうある。

「ぜ、ぜったい…なお、なおしましゅからね…」

治す直すなおすなにをどれをどうやって。小さいのは…涙できらきらとした目は、私を見ている。私を。一体、わたしのどこになおすものがあるのだろうか。

口布が元の位置に戻される。
小さいのは、ふらふらとキッチンへと歩いていった。

小さいのは、私の何をなおすつもりなのだろうか。

プログラム?違う。
ボディ?これも違う。
データ?…あぁ、データには違いない。私にはデータしかない。なにやら欠けているデータだろうか。心当たりは山ほどある。そうだ、きっとあの小さいのは、破損したデータを埋めてくれるのだろう。この制御できないバグのようなプログラムの暴走も、そのせいだ。

背後にひょっこりと現れて笑っているクロダに蹴りをいれる。なぜだろう。そうせずにはいられなかった。そういえば、私はクロダに敬称をつけることができない。これも何かのバグなのだろうか。あぁ、わからない。みしりと歯車が軋む。
小さいの、小さいの。いつか、お前が私のバグを治してくれるのか。
小さいの、小さい。いつか、私は…

おや。熱センサーがなにか言っている。なになに。小さいのがポッドをひっくり返した?火傷とやらができてしまう。クロダ、なぜあなたが慌てているのですか。あぁ、ミツナリ、タオルはこちらです。えぇ、お任せください。この程度、私に治せます。治せますから。



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一回がち大破したあとのお話。
イドルが消滅して、その抜け殻を黒田が神父様に見せに行って、神父様が敵をとってくれた後。
黒田?トラックでミンチになったよ。でもさらっと生き返るから、みんなの舌打ちが聞こえるね!

そして、データとかって、初期化してもきっとカスみたいなのは残るよね。みたいな。
イドルさんニューバージョンは、「黒田家の従順なるお人形(と書いて家政夫と読む)」だったり。
記憶もすっ飛んでるけど、やっぱりどこか残ってるからもやもやしちゃう。そんなイドル2。


mae//tugi
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