「今日で終わりだねー…」

しみじみとクラスメイトの誰かがつぶやいた。
そうだね、なんてまた誰かも答えた。
賑やかな教室。華やかな黒板。笑顔がまぶしいクラスメイトたち。
彼らと会うのも今日で最後。最後だった。

「卒業式も終わったし、もう会わないのかぁ」
「なんだか寂しいね」
「どうせどこかで逢えるでしょ、また」

ぐずりと誰かが涙を拭いた。べそべそと泣いている子を別の子が慰めた。
写真をとろう、最後なんだから、と誰かがカメラを取り出した。
ほらほら、こっち向いてよ!
彼女は席でだべっていた少女Tへとカメラを向けた。
カシャリ。
フラッシュはたかれなかった。

「あ、れ」

プレビュー画面には、誰もいない机が写っていた。
その後ろの机と、手前の机の間には何も写っていない。
けど、確かに少女Tはそこに座っていた。

「写らない」
「写らないね」

忘れていたことを思い出しそうになる。
へらりと少女Tは笑った。カメラを持つ少女も笑った。
これじゃあ写真、残せないなぁと少し寂しそうに笑った。
そんな彼女たちを他所に、誰かが言った。

集合写真を撮ろう!

嗚呼、でも、写らないんだよ。
少女Tも、少女Nも、少女Aも、写真に残らないんだ。


「写真、撮ろうか」

少女Nが笑った。
隣に居た少女Nの友人がまた泣き出した。

「そしたら、お別れだね」
「いやだよ」
「仕方が無いよ、終わっちゃったんだから」
「…でも、いやだ」

ぐずぐずと愚図る友人に、少女Nは困ったように笑った。



全員が並んだ。
それじゃあ撮るよ。
カメラはシャッター音を響かせた。
さぁ、これで終わりだ。



さいごのカメラの向こう側
(やっぱり写らなかったね、残らなかったね)




最後の卒業式。最期のお別れ。
少女Tも少女Nも少女Aも、それから数人。
彼女たちの立っていたところはぽっかり空白が空いていた。
だって、昨日、死んでしまったじゃないか?



実は昨日見た夢の話…だったりする。
夢日記じゃないからセーフ。たぶん。
淡々と死んだことにも気がつかないで笑ってる。
最期にお別れの直前に、思い出したように泣くのです。
どうしてどうしてと縋りついても、
目の前で笑っている彼女たちはすでにいないなんて、
なんて残酷な話なんでしょうね。
神様のいたずらとやらなんでしょうか。やれ、悪趣味なことです。
夢でよかった。夢だけであれと願いたくなるものです。


mae//tugi
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