「…… …   よ」

呼ばれて目を覚ます。
白いだけの空間に目がくらむ。
自分の姿も曖昧だ。実際、そうなのだろう。
構成途中の体はどこか黒い靄がかっており、不安定だった。

「……は」

ここはどこだと口にしたつもりだった。
だが、完成していない口からは黒い霧が吐き出されるだけだった。

「ここはどこでもないがどこでもある場所、なに、直にわかる。お前ほどの存在がわからないはずもない。今しばらく、眠るがいい」

次に目覚めるときには理解するだろう。
そうどこか笑っているような声で誰かがいう。
眠気に身を任せながら、遠くから違う声がした。
その声がひどく耳に心地よかったが、それが誰だったか、思い出すことはなかった。



目を覚ました場所は周囲が白んだ空間だった。
よく見ればそれは白というより砂の色で、光をきらきらと反射させるその建物が白くみえるだけだった。
まるでぽっかりと自分だけが中途半端に色を持ったかのように思え、狼狽える。
「……ここは」
ちりりと脳裏に光が走るような気がした。次々と浮かんでは消えた情報の伝達速度が早すぎるようで、それが収まるまでうずくまって耐えるよりほかになかった。
「……ああ、そう…また…一人ってことかァ」
やがて、その記憶と情報の激流が収まって、ゆっくりと顔を上げる。
金にも見える目で周囲を見渡す。ひどく不安げ、いや、寂しげな顔だった。
「…いな、い」
いない、ともう一度呟いたが、もはや声にはならないほどの小さいこえであった。




君の声も聞こえない




諦めて立ち上がる。マントの裾からはらはらと砂が舞った。
うっすらと記憶に混ぜ込むように叩き込まれた情報をゆっくりと解く。
厄介な世界だ。誰にいうでもなく文句を言う。
そしてここにいてもどうしようもないと、無人となって久しいその地を後にした。



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ぼっちログインが多い。

mae//tugi
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