「馬鹿馬鹿しい」
吐き捨てるような、ネイシャが呟いた。足元に蹲り、呻く男を冷めた目で見つめながら。
レーザーによって綺麗に撃ち抜かれた肩。吹き飛んだ片足。だらりと動かない腕。血まみれで傷も分からない片手。長くは無いだろうほどの負傷だった。
「ぐ…」
「聞いてますか?市民、マーリー?」
「あ、ぁ…聞い、てる」
声を絞り出すたびに肺が熱く燃えるかのようだった。息をするのさえ、煩わしいほどの。
「あなただって、こんな馬鹿げた事でクローンを全て失いたくは無いでしょう?」
「……」
呻きさえあげなくなったマーリーの、その肩の傷を踏みつける。靴が血で汚れるのも気にしなかった。
「答えなさい」
「ぁぐ……ネイ、シャ…君は、間違って、る…この、僕が、こんな事を恐れるって?ま、さか…っ!」
そんな言葉を聞いて、苛立たしげに傷を肩を蹴り飛ばす。直様、残っていた片脚も嫌な音を立てて、なくなった。叫びが上がる。煩い
とばかりに、その頭を蹴り上げた。
「わかっ、て、ない」
「分かりたくもない」
それでもまだ、しぶとく彼は生きていた。痛みが麻痺しだした身体で、マーリーが愉快げに笑う。珍しいことだらけだ、と。
「わかって、るく、せに」
「分かりません」
血まみれで死にかけている自分も。わかりません、と力無く零した彼女も。なかなか珍しい、と殆ど見えない目を細めて笑う。
「わかる、だろ、全知全能」
からかう様に、同時に慈しむように、マーリーが投げかける。なんだってこんな散々な目にあったのか、既に分かっていた。
「わかりません。この、わたしが」
そんなことあってはならないのに、と囁くような声だった。それでいい、と彼が、重たく感じる片腕をネイシャに伸ばす。
「わからなくて、いい」
僕が君の為なら命さえ要らないと告げられることも。君が分からないその全ても。代わりに僕がわかってるから、と。伸ばされた手を、汚れるのも厭わずに、彼女は掴む。すがる様だと彼は気を良くした。
「でも、それじぁあ、」
こうしてあなたを傷つける、とその手に頬を寄せる。
「ネイシャ、それでいいよ」



僕のわがまま、君の知らない




「だけど、いつか」
「きみはしってしまうから」
「そのひまで、」

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お題、【冷めていく感情、熱くなる心】より。

因みに事の発端、原因は、マーリーが紫嬢と楽しげに会話している現場を目撃したことから。
適当に理由をつけて、ボコりにくるけど、なんか嬉しくてされるがままなマーリー。それをみて、自分がなにしたいのか尚更分からなくなるネイシャ。さらに嬉しくなるマーリー。ショート寸前なネイシャ。仲良し。代償はクローン一体。


mae//tugi
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