鬱陶しいと男が舌打ちをした。
深夜、多くの存在が寝静まった久希里市の少し外れ。
人通りの少ないその道路には数人の人影と、傍らにはパトカーが一台。
パトカーの中から背の低い人影が気だるげに指示を出す。
「さっさと片付けろ!」
「無茶言うんじゃねぇ、よっ!」
ひゅ、と風を切る鋭い音に機敏に反応して男が自信の顔を狙った鋭い一撃を避ける。
星どころか月さえも出ていない薄暗く、靄がかった視界の中であろうと、パトカーのヘッドライトによってそれはくっきりと見ることができる。
悪態ばかりつく男と対峙していたのは黒い黒い人型の、しかし人ではない存在。
うっかりとそれと遭遇してしまった一般市民は無事に保護できただけ、よしとしよう。
無事といっても、まぁ、あれだ。パーツは無事に全部残っていたという意味だが。
「ボスがやれば早いだろーが!」
「あー、ほら、なんてーの?お手並み拝見ってやつ。」
「ふざけ」
男ががしゃりと手に持っていたショットガンに弾を込める。
もちろんお相手がそれを悠長に待ってくれるわけもなく、好機と言わんばかりにその光も吸い込むような黒々とした腕を上げ、振り下ろした。
それを男は避けるでもなく、のんびりとした様子で銃身を構えた。
鋭い爪が男の首をえぐろうとしたそれより素早く、ショットガンよりも軽い銃声が響く。
「あほか。」
車内だろうと視界が悪かろうと、彼女が外すわけもなかった。
よたりと一瞬その衝撃でひるんだそれに向かって、先程より重い一撃が叩き込まれた。
「残業手当ってでるのか?」
「でない。」
ずしゃりとそれが崩れ落ちたのを見届けながら、男が帰りたいとため息をついた。


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タイトルどおり。
化物あふれる愉快な久希里の治安のためには、害虫駆除も必要なんです。

ちなみに、頑張ってる男がダン。
射撃王は我らが南署のボス、咲。
そして敵は夜鬼あたりを想定してぼそぼそと書いておりました。
保護した男性?あぁ、まぁ、パーツ以外はだめでしたね。

即興小説お題【漆黒の闇に包まれしあいつ】より

2013.06.27 移行

mae//tugi
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