全身を白で覆った青年がニコリと笑顔を作った。
実に幸せそうに彼が笑うので、くらりと視界が歪んだことにも気がつかなかった。
遅れて耳に音が届く。感覚がずれているようだ。
致命的だと思うことだろう。しかし、だが、それは、もう気に病むこともない。
あと数分もしないうちに、この命は尽きるのだから。
ああ、音が遠い。遠い。遠い。
目の前の彼をなんとか見やれば、ごくろうさま、と口が動いたのだけわかった。
ああ、彼が遠い。遠い。遠い。

遠い。



とおい。






「さすが、反逆者をあぶり出すのがお上手ですね」
「そりゃあそうだろうさ。長いあいだこうしてきたんだから」
「それもそうですね」
白い男以外に誰もいない部屋で無機質な声が彼と対話していた。
大して感情も込められていないその声の一つさえも彼は聞き逃すまいといわんばかり。
「君に歯向かう奴らには、相応しき死を。それこそが僕たちの秩序だ。」
「えぇ、流石です。」
この世界は彼らのもの。誰一人として例外は許されない。
逆らう者には、ふさわしき罰を。
今日も彼らの絶対的な世界がそこに広がるだけ…

「反逆者の浅はかな考えなどあなたにはお見通しというところですか」
「そりゃあそうさ!」
「…ふふ、さすが、さすがです。市民の手本となるだけはありますね」
「お褒めいただき光栄!」


無機質な声に褒められて、彼は子供のように喜ぶのだ。
彼もまた、無機質なその言葉のために、力を入れるのだ。


全知全能のコンピューターの名のもとに。



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当家看板コンビになりつつあるマリネの話でした。
この頃にちょうど、マリネの名前を決めた頃ではないでしょうか。
わりかし書きやすいコンビなので気に入っています。

即興小説お題【計算ずくめのネット】より

2013.06.27 移行

mae//tugi
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