古びた空気を持つ日本家屋。住んでいる人物も同様に和を好む人間だ。
昔ながらの家屋に、それを好んで住んでいるときけば大分聞こえはいいのかもしれない。
が、残念ながら住んでいるのは多少厄介な人間にほかならない。
「組長ー本当に本当にことを構えるんですか?」
まだ年若いが顔に傷の目立つ青年がちゃぶ台越しに組長、と呼んだ相手に情けない表情をしていた。
そう呼ばれた男はといえばくくっと喉の奥で楽しそうに笑うだけで、それもまた彼の不安を助長させる。
「うちもだいぶ人数減っちゃって…心配なんすよ、俺も」
ちゃぶ台にあるお茶をすすって気分を落ち着けさせながらちらりと見やる。
おう、としか返さないその男と目が合い、ぞわりと背中に悪寒が走った。
「あのぅ、く、組長」
「安心しろってーちゃぁんと俺も考えてるから…」
その言葉に青年はどれほど…不安感を煽られたことか!
確かに男のことは慕っている。しかし、この男は何事にも適当なことが多い!
そのせいでどれほど…とため息をこぼしそうになり、なんとか、飲み込んだ。
「俺がちゃらんぽらんで心配だって言いたいんだろ」
「え」
違います、と言いたくてもかすれた声しか出てこなかった。
図星を言い当てられたから、とかではなく、その男がにやりと笑いながら顔を近づけてきた、その恐ろしさにだ。
どれだけフレンドリーに接したところで相手は上の人間。
機嫌を損ねてしまえば…と嫌な考えが頭を巡った。
「だーから安心しろって。身内には優しいっていってるだろーが」
びびってやんの、と男がげらげらと笑う様子にも乾いた笑いしか返せない。
もう一度、安心しろよ、と言いながら男は立ち上がる。
「もう手ぇだしちゃったもん」
「…え!?」
若い子のように軽いノリで男がそういった。まちがいなく。
嘘だろう、と青年が頭を抱えるのを見ながら男はどこかへと電話をかける。
「そっちの様子は?うまくいったって?そりゃあよかった。」
それを目の前でみた青年はああ、いやに楽しそうに笑っているなぁ、と遠い目だ。
「おっしゃー、そこさえ抑えちまえばここいらで歯向かう奴はいなくなる。後一歩な」
そう言いながら男が青年の背中を強く叩いた。
「行くぞ。ほかの奴らも呼んで来い」
「…はい!」
まぁ、きっとちゃんと考えてるんだろうと信じて青年は部屋を出た。
「あーぁ、このあとどうするかなー…」
といつもより深刻な表情で男がぼやいている声を聞かなかったことにしながら……


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ちなみにこれ、烏城組の話でした。
ちゃらんぽらん組長の零と、名も無き青年。

即興小説お題【きちんとした動機】より

2013.06.27

mae//tugi
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