日差しも傾き、そろそろ子供たちが帰る時間が近づいてきた。
公園ではしゃいでいた一人の子供が突然足を止めた。
それから、ぱたぱたと軽い足音をさせながら一直線に走っていった。
しゃがみこんで、宝物を手に入れたように笑った。
夕日がその手にあるものをきらきらとさせた。
「落ちてるものはきたないよ!」それを見ていただれかが言った。
「ううん!そんなことないよ、これはねー…」と拾ったその子供が得意げに話しだした。
彼らの心の中ではたいそう立派な別の何かにすら見えるのだろう。

‥‥‥ちょうどその真上の木に止まる落とし主のその表情といったら、もしも見ることができていたら大きな声を上げて笑いたくなるほど微妙な顔をさらけ出していた。
拾った子供たちは名称になんてこだわらないようで、拾ったそれを鳥の抜け毛と言って笑った。
彼らからしたらそんな些細なおとしものであっても、それはそれは金貨よりもよっぽど輝いて見える宝物なのだろう。
時期にいいないいな、なんて言いあったりするその光景は微笑ましいと言えば実に微笑ましい。
最も…落とし主からしてみれば…「抜け毛という呼び方だけは不名誉だ」とでも言いたげではあるが…

やがて、彼らの保護者が公園へと姿を現した。
わいわいと盛り上がるうちに彼らの門限は過ぎていたようだ。
大人が子供の持っているモノを見てくつくつと笑った。
その目がまるで昔でも見ているかのように細められていることなどだれも気がついちゃいない。

「そりゃあまた、いいものを拾ったな」
「でしょー!」
などと笑い合いながら親子二人が仲良く帰っていった。

あのおとしものは少年の少年だけの宝物入れに入れられることだろう。
それから、またいつの日か、そんな日があったと少年も思い出すのだろうか…
などと遠い日を思いながら、カラスが一羽ほど山へと飛び去っていったのであった。

----------
イメージはほのぼのろーるぷれいんぐのあれ。
タイトルのオレンジ・マーマレードは書きながら聞いていたBGMの名前です。
さっぱり風味。

即興小説お題【見憶えのある抜け毛】

2013.06.27 移行

mae//tugi
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -