「あらやだ、なんでそんな言葉を知ってるのかしら」
われらが最愛なる女王がそう笑いました。
それから、それはそれは楽しそうに、反逆者と指をさしたのです。
それが全部。だれも逆らうなんて許されません。
かわいそうに、かわいそうに。
今にも泣きそうな顔でその人は女王にすがりつきます。
ああ、どうせそれさえも演技なんでしょう。
ほんとうはそんなこと、全員知ってるんです。
「そんな!どうか、ご慈悲を。私めが反逆者など と」
短いレーザー音。頭を弾き飛ばされてはこれ以上の弁解もできませんね。
愚かな反逆者なら、処刑いたしましたわ。
リーダーがそれはそれは完璧な笑顔を浮かべていうのです。
さすがリーダーですねと副リーダーもたたえます。
なんてなんて、コウフクな世界なんでしょう。
言葉一つが命取りだなんて、本当、滑稽すぎてお腹の痛くなる世界でしょう。
一体わたしも何人目だったでしょうか。
すでに数えるのも面倒くさくなるほど、同じことを繰り返している気がします。
「あら、あなた、どうしてそんなものを持っているのかしら?」
「は、」
「それはあなたのクリアランスで許されてるものではないでしょう?」
「おやおやぁ、またまた反逆者ですか、嘆かわしい!」
「こ、これは ちが 」
どうやら武器管理係がリーダーの荷物に目をつけていたようですね。
ここぞとばかりに引っ張り出すだなんて、性格の悪い人ですね。
繰り返すように短いレーザー音。
そういえば、リーダーにうっかり殺されて、腹が立っていたようでしたものね。
リーダーの自業自得、いえ、それともこの世界の常でしょうかね。
死体がさっと掃除されて床も綺麗にいつもどおり。
素晴らしいですね、まったく。
耳にいたい静けさが部屋に残されてしまいました。
結局だれも言葉を発せないのです。仕方がないことですね。
「さて、今回の報告は?」
かつて存在した蟻と同じように殺されるのが定めなのでしょう。
それでもその命を一秒でも長らえたくて、私たちは嘘と保身の言葉を並べるのです。
「はい、UV様。」
ぺろりと渇いた唇を一度湿らせてからにこりと笑顔を貼り付けるのです。
全部嘘偽り。
きっと、一番知っているのも、一番恐れているのも、女王なのでしょう。
「報告します。」
完璧で幸福な世界の元で、ひとりぼっちなんでしょう。
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みんな大好きパラノイアネタでした。
UVさまやCPさまを女性にしたがるのは趣味です。
即興小説お題【臆病な唇】より
2013.06.27 移行
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