La Famiglia | ナノ





02

「よっくん こえ あげゆー♪」
「ダメだよ ななちゃん、すききらいは…」



陽介が生まれて3人家族になった俺たちだったがまた新たな命を授かり4人家族になった



『こぉ〜らっ!! めっ!!』



腰に手をあてて、娘の七海の顔を覗きこむ
こんなに可愛く怒られても迫力に欠けるな…



クスッ

『もう、京介くん!笑わないで!』



頬を少しだけ赤く染めて俺に抗議してくる
今も昔も何事にも全力で中身も容姿も変わらない
芸能界を引退して何年になるかな…
彼女は少女と妖艶さを持ち合わせたアイドルだった
今は俺の奥さん



カチャンッ



「あ…」
『よっくん…』



コップを倒してしまいテーブルに牛乳がこぼれた



「…ごめんなさい!!」



長男の陽介(6)顔は睦月にそっくり
不器用だけどとても面倒見のいい優しいお兄ちゃん
顔だけじゃなく中身も睦月によく似ている
生まれたての頃より目元が俺に似てきたかも…



「あーあ…よっくん、あーあ…」
『こーら!ちゃんと謝ったんだからそんな事言わないの』
「…ふ、ふぇ…」
「ななみー、涙でてないぞー」



顔を近づけるとプイッと横を向いてほっぺを膨らませる
我が家の長女 七海(3)顔は…俺にそっくり
中身は…まあ、結構要領がいいというか…
どっちかというと俺似?
そして、俺…中西京介…
4人家族の中西家は今日も朝から大騒ぎ



「ほらほら、もう拗ねるな…俺が悪かったから…」



七海の頭にポンポンとてのひらを乗せる
甘いな…俺も…



「じゃーパパにもこえ あげゆー」



自分の嫌いなブロッコリーを俺の皿に乗せると小悪魔の微笑みを向ける
末恐ろしい我が娘…



『ななちゃん!!』



睦月の声がリビングに響き、涙目になりながらガジガジとブロッコリーをかじる
七海に注目が集まってる中で陽介が寂しげな瞳でそれを見つめていた事に俺は気付けないでいた











「陽介?」



脱衣所で服を脱ぐ陽介に気がついた



「ああ、さっきの…牛乳が服にかかってたか…」



彼の着替えを手伝おうとしたけど



「だいじょうぶ、じぶんでできるから…」
「…そーか?」



なんとなく寂しい気分になりながらも成長している息子に頼もしさを感じつつ彼の着替えを見守った



「できた!」



頬を緩ませ手を広げて俺に見せる



「…おしい…ちょっとずれてるな…」



互い違いになったボタンを正しくかけてやる
ほっぺを真っ赤にし、恥ずかしそうに視線を伏せる



「でも、いつの間に一人で着替えができるようになってたんだ?凄いな…」



陽介を誉めたのに彼はあまり嬉しそうではなかった















『よっくん…?眠れないの?』



睦月の囁くような声でふと目が覚めた
昼寝に付き添って、俺も子どもたちと一緒に眠っていたらしい
体を起こそうとして躊躇った



『…よっくん?』



見た事もないその光景に戸惑いを隠せなかった
陽介の様子がおかしい?
何かを我慢して
睦月が顔を覗きこんでも視線をそらして…
だけど、全く慌てた様子のない睦月がにっこりと微笑む



『おいで…』



両手を広げて陽介に向き合う



「…ボク、おにいちゃんだから…」



その陽介の言葉に心臓がドキリと音をたてた
そう思ってこの子は我慢をしていたのかもしれない…
寂しい思いをしていたのかもしれない…



『はい、よっくん…』



尚も両手を広げて陽介に微笑みかけている睦月
その笑顔はまるで聖母マリアのようで…
吸い込まれるように彼女の腕の中におさまる陽介をやさしく包み込んだ



『最近、よっくんが甘えてくれないから寂しかったな…』



睦月は陽介の寂しい気持ちも全部わかっていたんだな…
さすがは、母親…



『いつもななちゃんのやさしいお兄ちゃんでいてくれてありがとう、よっくん…』
「…でも、ボク…」
『ちゃんと知ってるよ。一人でお着替えできるようになった事も、いつもななちゃんを見てくれている事も…』



陽介の目がみるみる大きくなって、キラキラと熱い視線で睦月を見上げる



『お母さんは、よっくんのお母さんでもあるんだから…ぎゅってさせて?』



頬を赤く染めながらも、嬉しそうにうんと頷く陽介
お兄ちゃんになるという自覚とまだ甘えていたいという葛藤の中で戸惑っていたのかもしれない

優しい所作で彼を抱きしめる睦月
陽介は彼女の腕の中で安心した表情を浮かべる
嬉しそうに笑顔になって

そして…
そのまま寝息を立て始めた

小さかった頃の記憶は曖昧で忘れてしまった事も多い
俺も…寂しさを抱いていた子どもだったのに…



「睦月…」



声をかけると、しーっと人差し指を自分の口元にあて、陽介を七海の隣に寝かせる
仲良く寝息を立てる子どもたちを見つめ、そっと部屋をでた
思わず…
本当に無意識に近い状態で彼女を抱きしめた



『き、京介く…』



あまりに突然の出来事で混乱している彼女がとても可愛い…
俺の腕の中にすっぽりとおさまるキミはこんなに小さいのに、心が大きくて本当に…



「…好きだよ」



真っ赤になった耳に囁きかけると、触れ合った部分から熱を帯びてくる



「…ね?俺にも…ぎゅってして…?」



子どもたちには
内緒で…








-02.ぎゅっ end-

2012.07.24


prev  next




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -