La Famiglia | ナノ





03



中西陽介 6歳
お父さんはテレビでお芝居したり、歌をうたったりしてます
お母さんはおうちでボクたちのご飯作ったり、お洗濯したり、お掃除したりしてます
妹もいます
ななちゃん 3歳
本当は…【お兄ちゃん】って呼んでほしいけど
ななちゃんはボクの事を【よっくん】て呼びます
ボクがもっといろんな事ができたら、ななちゃんはお兄ちゃんって呼んでくれるかな…
いつも失敗ばかりしてしまうから、今日はがんばろう!!
って思ったのに、朝からコップを倒して牛乳こぼしちゃったし…
お着替えも一人で出来るって言ってがんばったのに、ボタンがずれちゃってて…
お父さんは褒めてくれたけど、あんまり嬉しくなかった

ボクが「パパ、ママ」って言ってたのはいつまでだったかな
友達に子供っぽいって言われたんだ
…なんだか悔しくて…
「お父さん、お母さん」って言うようになった
だけど
「よっくんがお兄ちゃんになったのね」
ってお母さんは嬉しそうだった
お父さんは何も言わない
ボクは…2人に怒られた事ってないかも…











「…っくん…よっくん!」
「…っ…」



あれ…?
今のボクは6歳のはずなのに…



「またこんなとこで寝ちゃって!この前みたいに熱だしても知らないからね!!」



腰に手を当ててボクを見おろしてるのは…



「…なな…ちゃ…」



3歳のななちゃんが…



「大きくなってる…」
「???何が???」



段々と脳が動き出して今の自分の現状を理解した
どうして6歳の頃を夢に見たのかはわからない
あの頃と変わった事といえば…
昔ほどガムシャラにならなくなった事かもしれない

―――自分にできる事をやる

背伸びしても自分らしくない事に気がついた
ボクはボクだから…



「今からクラスのお友達がくるの!」
『あら?何人くらい来るの?』
「4人…班で発表しないといけなくて…」



ななちゃんがクラスの子を家に呼ぶのって珍しい
だからなのか、お母さんがすごく張り切っているのがわかった
冷蔵庫からミネラルウォーターを取ると自室に篭る










程なくして家の中が賑やかになった



「うわ〜…ななちゃんのお母さんて美人さんだー」
「いいな、いいなー」



リビングでの会話がここまで聞こえてくる
もう少し昼寝でもしようかと思ったけど無理っぽい
薄手のコートを羽織って部屋を出た
なんか、甘い匂いが…



『よっくん、お出かけ?』
「うん…本屋…」
『いってらっしゃい』



なんだかお母さんの声が嬉しそうだ
駅前まで足をのばして時間をつぶした










「ただいま…」



玄関に並んであった小さい靴たちの存在がない
もうななちゃんのクラスメイトは帰ったようだった



「よっくん!」
「うっわ…ななちゃん?」



まだ靴も脱がないうちに突進してきたななちゃんを受け止めた



「どうしたの?」



顔をボクのお腹当たりに埋めてギュッと抱きついたまま頭を振る
昔のななちゃんだったらこんな事もよくあったけど
流石に小学生になってからは初めてかも…
不安な事があるとこうやってくっついてきてたな
気が強いとこもあるけど、ななちゃんは可愛い妹…



「…よっくんは…七海のだよね?」
「っ!…なな、ちゃん?」



思ってもみなかった問いかけにどう答えていいのか一瞬ためらった



「っ…七海だけの…お兄ちゃんだよね!」
「…うん…ななちゃんだけのお兄ちゃんだよ…」



ななちゃんを落ち着かせるように背中をぽんぽんと撫でる
徐々に気持ちが落ち着いてきたのかボクに笑顔を向けてくれた



「今夜、ハンバーグだよ!また七海のブロッコリーよっくんにあげるからね!」



パタパタと自分の部屋に戻っていくななちゃんの背中はホントに嬉しそうで
たまにはブロッコリーを食べてやろうかな…なんて気持ちが芽生えていた



『よっくん、お帰りなさい』



お母さんが顔を出す



『さっきね…』



そう言ってお母さんが教えてくれた
お母さんに男の子たちが懐き、女の子たちはななちゃんにボクの事を質問攻めにしたらしい
なんで…ボク?



『よっくんがかっこいいって女の子たちがはしゃいでね
ななちゃん、ヤキモチ妬いちゃったのね…』



そっか…
だからななちゃんだけのって強調してたのか…

あ…やっばい…
顔がニヤける…



「お母さん、あのさ…」










「ただいまー」
『おかえりなさい!ちょうど今からご飯よ』
「間に合ってよかった…ん?七海のおかずおかしくないか?」
「パパ、おかえりなさい!おかしくないよ、全然…」



段々と尻すぼみに声のトーンが落ちていく



「おかえりなさい!今日は特別にななちゃんからブロッコリーをもらって…」
「そう!今日は特別なの!」



途端にボリュームの上がる声にお母さんがクスクスと笑う



「ま、睦月がいいんだったら、オレは何も言わないけどな…お!うっまそう♪特別に七海にオレのブロッコリーあげるぞ」
「ヤダー!パパのいじわるー!!」










そう、今日は特別…
【お兄ちゃん】って言ってもらえた日
普段は言ってくれないけど
ちゃんとななちゃんの中でボクは【お兄ちゃん】だった





-03.lovable end-
2013.01.08





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