Promise-夢想- | ナノ





夢の共演







「菜々子…大丈夫?」



帰り道での禾夜の言葉…



『…う、うん…』



あの後、流行りのポップスを1曲、春さんと夏輝さんに披露して…



「今から、ここに行くんだよね?」



春さんから渡された地図…

いつも、JADEが練習している場所が書かれている



メンバーの秋羅さんと冬馬さんに会わせたいからって…



私の頭は混乱しっぱなし



『私…道がよく分かんないんだよね…』



不安になり、そんな弱音をはいていた



「俺が一緒に一緒に行ってやるよ!」



私と禾夜の間から顔を覗かせた京介が…



『うわっ…びっくりしたぁ…』



「京介くん…ただ単にJADEの練習場所が知りたいだけじゃないの?」




――禾夜…鋭い…




「ち、ちがっ!折原先輩に場所がわからないといけないからって、頼まれたんだよ…ほらっ…」



そう言って京介は自分の携帯を取り出し、夏輝さんからのメールを私たちに見せた



「ホントだ…嘘は言ってない…」


『…てかさ…いつの間に夏輝さんとメアド交換なんてしてんの…』



こういう行動力って羨ましいと思ってしまう



そんな事を考えていると、私の手から行き先を書いた地図を抜き取り



「行こうか?菜々子ちゃん」






























「他校からの参加を快諾してくれて、ありがとう…」



俺は礼を言うために生徒会室にいた



「快諾じゃなくて、説得したのよ、先生方を…。他校の2人にも決まりは守らせてね…じゃないと…」



「ああ、わかってる…サンキュー…華帆…」



「ちゃんと申請書も提出してね。…学園祭ライブは、私も楽しみにしてるのよ…春…」



嬉しそうな、困ったようなそんな表情…



「最高のライブにするさ…」



俺が彼女に笑って見せると、彼女も笑顔になる



「成功させてね…」



そう言った華帆の髪にそっと触れた



彼女の立場上、俺と話しているのを見られて噂になったりしたら申し訳ない



いつも華帆には、悪いと思ってる



その彼女が俺のライブを楽しみだと言ってくれた



彼女のためにも成功させないと…


























『ここ…かな…』



練習スタジオらしき場所に着いた



結局、京介に案内させてしまった



だけど、そのおかげでここに辿りつけた



私1人だったら、間違いなく迷子だね…



「あの…JADEの…じゃなかった。井上さんで借りている所は…」



JADEの名前は伏せているらしい…



やっぱりファンが多いからなんだろうな…



受付で名前を言うと、聞いているからと案内された




――夏輝さんが既に話を通してたんだ…




スタジオがいくつもある中で一番奥の扉を開けた



「お〜い…夏輝くんから言われた人来たよ〜…」



ありがとうございましたと、京介と二人で頭を下げて中に入る



「おー、来たか…」



「噂は2人から聞いてるぞ…俺は井上秋羅…ベース担当。よろしく…」



『あ…、岡田菜々子です…』



私たちに近づいてきたその人を見上げる




――おっきい…2人とも…




「俺は、中西きょう…」



「男には興味なーし…」



うわっ…京介、ものすごい顔で睨んでるよ…



「まあまあ…ドラム担当の水城冬馬。よろしく…」



『よろしくお願いします…あの…』



「ん?」



2人は私の事を知っているみたい…



『夏輝さんと春さんに、ここに行けと言われましたが…何ででしょうか?』



「聞いてないのか…そっちの学園祭に俺たちも出れる事になって、いつものJADEでも良かったんだけどな…。どうせなら、いつもと違う事やろうって…で、女性ボーカルたてようと君に白羽の矢が…」



そう言って水城さんが私を指差した



「夏輝の話だと、春が君の声をえらく気に入ったって言うし…」



2人の話が見えなくなってきた…



学園祭でJADEが出るのは…私も知っている



いつものJADEのライブではないものを作るために、女性ボーカルを立てて…それが、私で…



『えっ!!私ですか?何かの間違いじゃ…』



そう言いながら、頭の中は大混乱…



「何にも聞いてないんだな…」



2人がゲラゲラとお腹を抱えて笑っているけど、京介は笑ってなくて…



それがやけに不気味…



その時、京介の携帯が鳴った



「はい…折原先輩。はい、無事に着きました。はい…はい…わかりました…はい…」



電話を切ると、京介はこちらに向き直り…



「折原先輩より、学園祭までのサポートをするように言われた中西京介です。井上さん、水城さん、よろしくお願いします」



そして、ペコッと頭を下げた



「おう!」



「よろしく…」








その後、夏輝さんと春さんも遅れてここに駆けつけて…

夏輝さんのギターで1曲唄ってみた



練習スタジオだけど独特の空気の中で、自分の耳に入ってくる自らの声に驚きながらの歌だった



満足そうな春さんの表情に私も安心する



「改めて…菜々子ちゃん、JADEと一緒に学園祭で音楽を楽しまないか?」



優しい春さんのブラウンの瞳に吸い込まれてしまいそうになりながら、私は答える



『…はい…よろしくお願いします』




――大好きな春さんと…一緒に唄うなんて…




学園祭までの練習の日々を考えても、かなりの時間を一緒に過ごせる



そんな風に自分の事しか見えてなかった…



京介が私の隣でこぶしを握って震えていたなんて知りもせずに…












07.練習の日々、そして成長 へ

2009.07.23

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