Promise-夢想- | ナノ





近づく距離







私たちはファミレスに寄って、3人でボー然としていた


「凄すぎて…言葉にならない…」


「ああ…話に聞いてたのと実際とじゃあ、全然違うな…」



『京介は今日一人だったよね?なんで?どうやって知ったの?』



私がそう聞くと、禾夜も身を乗り出してきた

京介はコーヒーを一口飲むと



「たまたまなんだ。ライブがある事知ったのも、チケットが手に入ったのも…」



禾夜も私も、京介の次の言葉を待つ



なんでも、京介のバイト先の人が行けなくなってチケットが流れてきたんだって…



そんなところにもJADEのファンがいるのがすごい



「どっちでも良かったんだけど、後で感想聞かせろって…しつこくて…」



ガシガシと頭をかく京介…



「京介くんってバイトしてるの?部活は?勧誘が凄くなかった?」




――確かに…なんとなく今まで聞きそびれてたなぁ…




「バイトは、普通にレンタルショップ。部活は…中学ん時陸上してたけど、引退レースで足を痛めて…。できない事ないけど、中途半端は嫌いだから。全力で走れないなら…で、やめた」



京介…今は笑っているけど、私なんかが想像もできないくらい悩んだりしたんだろうな…



「…ごめんね、変な事聞いて…」



『…ごめん、京介…』



私も禾夜も申し訳ない気持ちになり、気がつけば謝っていた



「謝るなよ…しんみりは…好きじゃない…」



そう言うとまた一口、コーヒーを口に含む



「今は…次にやりたい事を見つけた…かな…」



なんとなくだけど、京介の瞳の色が変わった気がした



『次にやりたい事って…何?』



「…今日、あのライブ見て…ギターに惚れた!」



「惚れたって…夏輝さんに?…」



「歌にも…」



『えっ?春さん…?』



禾夜と共に唖然とする



「歌もギターも両方!…そういえば…2人と仲良いよね?」



目を細めて笑う京介に何だか嫌な予感がしてしまった…

























禾夜と顔を見合わせながら、お弁当を持って中庭へ…



いつもの日常のはずだった



だけど、私たちの後ろには…京介が…



『…ものすごい笑顔なんだけど…』



「うん…ホントにファンになったんだね…」



中庭に行くと、すでに春さんと夏輝さんがいて…



「『こんにちは…』」



2人揃って挨拶をする



「やあ…」



「いらっしゃい…この前は来てくれて、ありがとうね♪」



夏輝さんがそう言うと



「あ、あの…彼女たちと同じクラスの中西京介って言います。俺もJADEのライブ行きました」



見た事もないニコニコ顔…



春さんも夏輝さんもびっくりしていた



「そ、そう…中西くんも来てくれてたんだ…ありがとう…」



「それで、俺…。…お二人のギターと歌に惚れました!」




――キャー…京介、何を言いだしてんの!!




「そ、そう…?…で?」



さすがの夏輝さんも対応に困ってるみたい…



「折原先輩!俺にギターを教えてください!!」



『え?』



「ああ?」



京介が夏輝さんにお辞儀をして必死に頼んでる



それを横眼に見ながら、春さんが私に囁いた



「この前は来てくれてありがとう…君は、歌はやらないの?」



意外と近づきすぎた顔の距離に心臓が跳ね上がる



そして…思ってもみなかった春さんの言葉に驚いた…



『私…ですか?』



春さんの顔を伺うと、私を見下ろし微笑んでいる



「俺は、君の声…好きなんだけど…」




――春さんが…私の声が好きって…




頭の中に何度も春さんの言葉がこだまする



時間がたつにつれて、ドンドン恥ずかしくなってきた



『は、春さんでも冗談言うんですね…はは…』



「いや…冗談ではなくて…本気…」



真剣な春さんの表情に、ドキドキしてしまう…



「一度、菜々子ちゃんの歌を聞かせてほしいな…」



『え?……え―――――っ!!!』



私の声が響き渡った…




〜♪〜〜♪♪




その瞬間、春さんの携帯が鳴り出した



「あ、か……ごめん…」



『いえ…』



春さんは、少し離れた場所で電話に出た




――まだ、心臓が…私の歌なんて…なんで…




頭の中がグチャグチャで整理できない



「菜々子…?」



頭をブンブン振る私に禾夜が声をかけてきた



『どうしよう…春さんが…春さんが…』



取り乱し気味の私の肩にそっと手を乗せる



「落ち着いて…何て言われたの?」



穏やかな禾夜の口調に、なんとか平静を取り戻す



そして、何を言われたかを禾夜に話した



彼女の表情がみるみる変わる



「よし、春さんに菜々子の歌を聞かせよう…うん、それでアピールだよ」



『ア、アピール…?』



禾夜の満面の笑みにつられてしまう…



この時、春さんに歌を聞かせてなかったら…



禾夜に話してなかったら…



私が歌の世界を志すなんてなかったかもしれない



人生のターニングポイントなんてのは、どこにどう転がっているか…誰にもわからない…



少なくとも私にとってのターニングポイントは、ここだった



いや…禾夜に会った時?



ううん…ホントは、京介にぶつかった時かも…



「悪い…」



電話を終えた春さんが戻ってきた



「おい、春!」



京介にある意味迫られていた夏輝さんが、春さんにSOSを出した



「夏輝!学園祭、許可出たぞ…秋羅と冬馬も参加できる」




――秋羅…?冬馬…?どこかで聞いたような…




「今の電話…そうか!最初で最後の学園祭in JADEだな!」



夏輝さんの言葉にハッとする



それは、禾夜も京介も同じだった



「マジで?学園祭にJADEがっ!!!」



京介の興奮の声…



私は禾夜と抱き合って飛び上がる



「…それで、菜々子ちゃん…」



『はい?』



春さんの視線にドキッとする



「やっぱり君の歌が聞きたいなぁ…」



その優しい表情に私は思わず…



『…はい…』












06.夢の共演 へ

2009.07.16


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