Promise-夢想- | ナノ





衝撃









ライブハウスに着くと、開演までまだ時間はあるのにそこは人で溢れていた



「これじゃあ、前の方は無理かもね…」



『チケット持ってるから、まだいい方かもよ?』



なんで?まだアマチュアのバンドなのに、ダフ屋らしき人がいるの?




――そんなに人気がすごいんだ…



開場が始まり、続々と人がライブハウスへとのまれていくのをボー然と見ていた



「菜々子、私たちも入ろう」



禾夜が私の手を引いて中に入ろうとした時、私たちの目に飛び込んできたのは京介だった



「誰かな…?一緒にいるの…」



私がさっき見た女の人と一緒に中に入って行くのが見えた



「京介くんの彼女かな…?でも、彼女いるって聞いた事ないんだよね…」




――禾夜も聞いてないんだ…じゃあ、彼女じゃないのかな?




2人で顔を見合わせながらも中に入る



中はそんなに広くなく、そこに押し込められた人でごった返していた



私たちは初めてのライブハウスという事もあり、端の方で見る事にした



「春さんも夏輝さんもこんなにたくさんの人を集める事ができるなんてすごいね…」



禾夜の言葉に頷く



その時、私たちの前方にいた京介と目があった



「…あっ…」



私たちを見つけると、京介が側に寄って来た



「何?2人も来てたの?」



『うん、京介いいの?彼女を一人にして…』



なんとなく気になっていた事を口にする



「ああ。彼女じゃないし…ここに来るルートがわからなくて道を聞いたら、行き先が同じだったんだ…」



禾夜と思わず顔を見合わせると、吹き出してしまった



「…?俺、なんか変な事言った?」



『ううん…私たち、てっきり京介の彼女だと思って…』



「…俺、彼女いないぞ…」



京介の複雑そうな表情がまた私たちの笑いを誘う



『だって…モテるからさ…』



「モテるって…たった一人、自分が好きになった子にモテないと意味がない…」



そう言った京介の顔がとても真剣で、そのあと続ける言葉が見つからなかった




――好きな子がいるんだ…こんなふうに思われたら、幸せだろうな…




京介が私と同じ様に恋をしている



意外な共通点に、グンと距離が近づいた気がした



その時、禾夜が私の腕を掴んだ



『…禾夜?…』



ステージを凝視している禾夜は無反応…



私もステージを見る



あれだけざわついていた周りが一瞬にしてシンと静まりかえる



ステージには、夏輝さん、そしてメンバーの人が2人スタンバイを始めていた




――もうすぐ、春さんが…




そう思った時、ステージに春さんが現れた



3人のスタンバイの状況を見てマイクを手にする



「JADEです…」



その言葉を合図にカウントをとる



最初の音から全身をわしづかみにされた



私の腕を掴んでいる禾夜の手に力が入る



私は京介の服を思わず掴んでいる事に気がつかなかった








――すごい…これがJADEの…春さんの音楽…




ハコ中にこだまする大歓声…



全身で音をリズムをとらえようとする人たち…



そして曲がバラードになると、誰もが息を潜めて春さんの伸びのある声を聞き逃すまいとする



コピーではなく、オリジナルのみの勝負でここまでのオーディエンスを虜にしている



約2時間があっという間だった…










05.近づく距離 へ

Special Thanks ナツ
2009.07.14

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