あなたを好きな証 | ナノ





05






肝心な時に好きと言えない私だけど

貴方はまだ私を好きと言ってくれますか?
















「ありがとう♪トロイメライでした!」



ファンの歓声とライトを一杯浴びてステージを後にする

あの日から走り出したトロイメライはドラムにリーダーとなる緑川龍とベースに南波櫂を迎えた

インディーズで経験を積み、活動の場もファンも増やしていき…

そして、5人でメジャーデビューをすることができた

それから2年が経とうとしている

私も22歳

雅楽との付き合いも4年が過ぎた

仕事もプライベートも順調だった…



















少しずつ私たちが世間に受け入れられている

毎日それを実感しながら過ごしていた

瑠禾の出した条件も私たちなりに守ってきたつもり

喧嘩をしてもバンド内には持ち込まない

それもあったからなのか、今まで特に揉め事もなくきている

そんな時、私に1本のオファーがくる

それは、トロイメライとしての…仕事ではなかった

私一人の…仕事

初めて認められたと思った

【七瀬花蓮】という人間を…




















「…んっ…はぁ…ガクゥ…」



彼との時間がだんだん取れなくなってきている

だけど、少しの時間でも私にとってやっぱり雅楽との時間は貴重なもの

会えなかった時間を埋めるように、彼と躰を重ねる

いつも雅楽と一緒にいて、いつも雅楽と仕事をして…

それが当たり前になっていたのに、ソロで仕事を入れてしまうと…すれ違う…

雅楽は何も言わないけど、彼もそれは感じているみたい

重なりあった躰は、中々離れようとはせずにお互いを貪りあった



「…花蓮…」

「…また…?…雅楽…んっ…」



彼に求められれば求められるほど、雅楽は私がいないとダメなんだと思ってしまう



「…っあ…」



彼に触れられた部分からまた熱を持ち始める躰は…



―――…雅楽を求める







「そういえば、瑠禾の曲が上がったぞ」



シャワーを浴びた雅楽が部屋に戻ってくると、ミネラルウォーターを一口含みベッドの端に座る

一見華奢な彼だけど、程よくついている筋肉に彼の努力が伺える



「じゃあ、今度は雅楽の出番か…」



雅楽が本格的に作詞を始めたのは、まだ高校生だった頃

私はいつも彼に寄り添って、歌を歌っていたっけ



「イメージは出来てる…かな…」

「フフッ!楽しみ♪」

「…お前…さ…」

「…ん…?」



雅楽は何かを言いかけて、ミネラルウォーターをまた口に含む

そのシルエットが凄く…厭らしくて…

気がつけば

雅楽が私に何を言いたかったのかなんて事を気にも留めずに、彼を誘っていた


















最初の仕事が成功すると、瞬く間に私一人だけの仕事が入る

ドンドン埋まっていくスケジュールに喜びは隠しきれなかった

それは音楽活動からドンドン離れていき、モデル、ラジオ、CMと多方面に広がった

トロイメライの名前もカレンの名前も同じ様に世間に認知されていく

順調だった…

私だけは…



















「ごめ〜ん!遅くなって!」



皆に会うのは2週間ぶり…

レコーディングに向けて集合した

とは言っても、私だけが今日から合流

すでに瑠禾の曲と雅楽の歌詞は頭に入っている

私も久しぶりの歌の仕事に気合いが入っていた



「久しぶりぃ〜♪」

「仕事、順調そうだな…」



櫂と龍が声をかけてきた

本音が見えない二人だけど、そう言われる事は嫌ではなかった



「世間に出るのはまだ先だけどね♪」



彼らの笑顔が偽りだと気がつく事さえ出来なかった私は…

ホントはもうすでにトロイメライのメンバーではなかったのかも

自分が順調で回りが見えなくなっていた



「ねぇ…」



冷たく聞こえる声の主に一瞬凍りつく



「花蓮、声出し!」

「はぁ〜い♪」



瑠禾のプロフェッショナルを求める言葉に背筋がピンと伸びた

わかってる…

歌以外の仕事をしても、トロイメライを疎かにしたらいけない

瑠禾に出された条件ではなかったけど、私だってそれなりに彼の気持ちはわかってるつもり



「あれ…?…今日、雅楽は…」

「聞いてない?雅楽も単独で仕事が入って、さとやんと行ってるみたいだよ♪」



答えてくれた櫂の言葉は当たり障りのないように聞こえるけど

付き合ってるのに、知らないんだ…

とも聞こえる



「そ?」



楽譜を見つめ、櫂の視線から逃げる

確かに…

最近の私たちは個別の仕事が増えた事もあって、以前ほど一緒に過ごす時間も減っている

元々、雅楽はベタベタすることは得意ではないから

私から押しかけたり、迫ったり…

私からのアプローチが減ったから、二人の時間が無くなったのかも…

だけど、私はそれ以上の事を考える事をやめてしまい、なんとなくうやむやになったままレコーディングへと突入した











頭の切り替えなんて得意ではなかった自分が

すごく昔の自分のような気がして

起用に立ち振る舞い始めた事に成長したんだと

間違った認識を持った事に気づくのはもっと後の事で…

気がついた時には

大切なものを取り戻せなくなっていた












‐05‐end

2011.08.01

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